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中ロがギリシャに接近。旧東側は太平洋と地中海の米英覇権を崩す
今日は自衛隊の創設記念日です。
中ロがギリシャ接近、「地中海の要衝」 米欧は進出を警戒 2015/7/1 1:15
http://www.nikkei.com/article/DGXLASGM30H9G_Q5A630C1FF2000/==========
もくじ
■最近の中ロの動きは恐ろしい ~ 近現代の地中海の戦闘の歴史
■論文紹介 トシ・ヨシハラ「比較の視点から見た接近阻止―大日本帝国、ソ連、21世紀の中国―」
■大日本帝国の対米接近阻止 ~ 漸減作戦と航空特攻隊 米国との国力差は11倍
■ソ連の対米接近阻止 ~ 巡航ミサイルとジェット爆撃機 米国との国力差は3~9倍
■中国の対米接近阻止 ~ 日ソの失敗から学んで米国に対抗 25年後には米国の1.5倍の国力
■太平洋と南沙で西沙でやりたい放題の中国
■中国の中南米での工作 ~ パナマ運河に並走、中国が建設するニカラグア運河
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■最近の中ロの動きは恐ろしい
暴落した時に株を安く買うのと同様、中ロが小国の危機に乗じて動くのは要注意だ。
以前キプロスへの中ロの接近が問題になったが、同様にギリシャも極めて重要な位置を占めている。
これらの海域は、レパントの開戦、リッサ海戦(1866)など有名な海戦が数多く発生している。
二次大戦では、この地域を抑えるために重要なクレタ島を守る、イギリス軍に対して、ドイツ軍が大規模空挺作戦で急襲するクレタ島の戦いなど教科書にも乗る数々の戦争が行われた。
昨年のウクライナから黒海の戦略要衝でありソ連時代最大の軍港となっていたセヴァストポリをウクライナから奪った。
次は黒海から地中海への海路を確保する必要がある。
その間には、ダーダネルス海峡とボスポラス海峡がある。
なお、このダーダネルス海峡も、一次大戦のガリポリの戦いに付随して、世界初の航空機からの船舶攻撃が成功したダーダネルス海戦が有名だ。
その後、このボスポラス海峡は航空母艦が通れないようにするモントルー条約が作られる。批准国は英・仏・日その他に加え、後にソ連とトルコが批准、主として地中海に権益を持つ一次大戦の戦勝国にメリットの多い条約だった。
ところが、二次大戦が終わりソ連が陸軍だけでなく海軍を整備し始めると、黒海から自国の空母を地中海に出すことができないのはソ連にとって面白くなかった。
そうやって建造されたのが重航空巡洋艦アドミラルクズネツォフ(基準排水量53,000t)だった。
やはりソ連・ロシアにとって条約や法律は自分の都合次第なのだ。(自衛隊もたいがいだが、条約は破ってない)
そういう批判を回避するには、黒海の外、地中海側に根拠地を置くという手がある。だからキプロスやギリシャは中ロにとってとても美味しい案件になる。
「新冷戦」という用語はいまいち広がっていないが、今回のギリシャやキプロスへの中ロの介入はもちろん、昨年のロシアのウクライナ侵攻や、中国の南沙諸島埋め立てや、日本やその他周辺国へのEEZ(排他的経済水域)や領海への侵犯はすべて、現在の旧西側諸国への明確な敵意である。
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ここに面白い論文がある。
トシ・ヨシハラ「比較の視点から見た接近阻止―大日本帝国、ソ連、21世紀の中国―」防衛省防衛研究所 第13回平成26年度戦争史研究国際フォーラム「統合及び連合作戦の歴史的考察」
(筆者は米海軍大学 John A. van Beurenアジア・太平洋研究講座教授)
これは20世紀の米国の圧倒的な海上覇権に対抗しようとした大日本帝国と、ソ連の分析と、今から挑もうとしている中国の分析レポートだ。要約すると以下のとおり。
■大日本帝国の対米接近阻止
大日本帝国がとったのは太平洋の島々を前進基地として機能させ、長大な航続力を持つ海軍機を配備、そして航続力と対艦戦闘能力を重視した強力な潜水艦群。これらに長距離魚雷である酸素魚雷を装備し、有名な漸減作戦で接近する米艦隊を削り、そこに長射程と個艦優秀性の高い戦艦大和などの艦隊で艦隊決戦を挑むというものだ。
防戦になってしまった場合も、絶対国防圏外縁部で二級の戦線には民兵配置して敵を止めつつ、敵の主戦力に自己の精鋭部隊を集中し局地優勢を作り迎撃する予定だった。
だが、致命的なことに日本軍は、中国戦線に大兵力を割き、しかも米軍は複数ルートで日本列島に接近してきたため戦力集中に失敗。
日本列島は国土縦深が全く無いため絶対国防圏が破られると即本土が焼け野原され敗北が不可避となった。
それでも戦争末期に島嶼に配備された5000機以上の航空特攻隊は現代の巡航ミサイルのように米艦隊を襲える能力があり、本土上陸を躊躇させる効果があった。
しかし日本は戦略の失敗を埋められるほどの生産力も経済力もなかった。
日本から見てアメリカの経済力は11倍もの差があった。
■ソ連の対米接近阻止
ソ連はまず核抑止力を活かして自国を守り、海軍も核ミサイルを装備した戦略原潜を自国近海の「要塞海域」に配備して自国の安全を守ろうとした。
核兵器ではアメリカと互角だが、通常兵器に限った海軍力は大日本帝国以上に、米国に比して整備が遅れ、空母はもちろんトマホークのような艦対地ミサイルに恐怖した。だが焦土作戦を歴史的に取ってきたように国土縦深は大きい。そこで沿岸に近い場所に重爆撃機を大量に配備し、長い航続力を活かし空中から長射程の巡航ミサイルを米艦隊に発射するというものだった。これは米空母艦載機の2倍の攻撃半径を持ち、米空母機動部隊がソ連支配地域を攻撃しようとする場合は、敵の攻撃を丸2日浴び続けて接近しないと自慢の空母艦載機とトマホークの力を発揮できないものだった。核抑止力ばかりでなく、通常兵器でも米空母とロシアの高速爆撃機によって、海上での米ソの大規模衝突を抑止力になっていた。
そして軍拡競争。アメリカは大西洋だけでなくソ連に余計な軍拡の強いるために北太平洋の海軍力も充実させた。その結果、東西両面で軍艦に勤しんだソ連は崩壊した。
ソ連からみてアメリカの経済力は3倍~9倍あった。冷戦の間一度として経済力でリードできたことはなかった。
■中国の対米接近阻止
中国はよく知られるように自国の海外線、大陸棚を延長した「第一列島線」「第二列島線」という戦略を立てている。
中国はソ連同様、核抑止力はもちろん、通常兵力では重爆撃機から巡航ミサイルを大量発射させる戦略をとっている。(しかも通常弾頭のみならず核弾頭も使用可能)
H-6 / 轟炸六型(航続距離6,000km)、DH-10 / 東海10巡航ミサイル(射程1500km~2000km)となっている。およそ4000kmを超える攻撃半径だ。
中国は陸上発射の弾道ミサイル、巡航ミサイル、そして巡航ミサイルを持つ爆撃機で攻撃する。
アメリカは本土からは遠く、中国と衝突する場合は、太平洋の島嶼、同盟国領土、空母を基点に攻撃してくる。中国はその3つを持続的に攻撃し続ける。
中国の兵器は低コストが強みであり、標的となるアメリカとその同盟国の施設や兵器は高コストであり、当初は中国側が戦略的に不利でも、最終的に戦略的優勢に転換する機会を得ようとしている。
米軍は、空母を使って接近して中国のミサイル拠点を叩こうとしても、冷戦下のソ連に対して不利だったように、甚大な被害が出るためできない。
中国の経済成長率が今後も6%を維持し、アメリカも3%を維持できるとすると、25年後、中国の経済力はアメリカの1.5倍になる。
(ただし中国の弱点として重要なシーレーンは現在すべて米英に握られている)
要約以上。
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■太平洋と南沙で西沙でやりたい放題の中国
特に中国は太平洋への野心が強い。近隣の中小国から南沙諸島を奪取し、しかも埋め立てて基地化。
日本やその他周辺国へのEEZ(排他的経済水域)や領海への侵犯を進めている。
(ただし、安保法制が日本で紛糾している間は、安倍政権の支持派が増えないようにおとなしくしている。)
南沙諸島の島の基地化について、米国から強く非難された際に「埋立工事はまもなく終わる」と煙に巻いたが、それは埋め立てが終わるだけで、実際には基地化はこれからである。
しかも、その埋め立てた島に旧式の沿岸砲を配備していた。「あれは軍事的脅威にならない旧式だ」のような楽観的なことを言うコメンテーターが居たが、確実に騙されているか、中国のコントロール下にある人物だ。
あの旧式沿岸砲は巡航ミサイルなどに更新されるはずだ。その島は、かつて大日本帝国がアメリカに挑んだ時のように、接近する米艦隊ならび同盟国艦隊に睨みをきかせる重要な拠点になる。
(ゲームで言うと、Microsoftの名作RTS、「Age of Empire」で街の外側へ外側へと「物見やぐら」を増設し続けるようなものである。)
その時に欧米日そして近隣国が中国を非難してももう遅い。
「装備更新しただけだよ。なんで沿岸砲は前から置いているのに、そのとき絶対ダメとか文句言わなかったの、今さら言うなんてあなた方が我々に対して何か野心があるんじゃないの?」
なんていうことは目に見えている。
これをほうっておくとどうなるかというと、台湾有事や東南アジアで有事が起こった時に米軍と同盟国が手出しできず。それらの中小国は絶望的な戦いを行うか、それを恐れて言いなりになるしかない。
■中国の中南米での工作
紹介の論文にて、中国の弱点としてシーレーンをすべて米英に握られているというのがあるが、中国はすでに手を打ち始めている。
一つがパナマ運河代替運河の建設プロジェクトである。
「軍隊のない国」の一つパナマ共和国、ここはかつて軍隊があったが、ノリエガ将軍が独裁化し、反米国家と関係を深め始めた時に米軍がパナマ侵攻(1990)により、軍隊が解体され完全にアメリカの傀儡国となった。
というのもこれはパナマ運河が米国のお膝元で、世界的にも重要な太平洋と大西洋を結ぶ国際的な海運の要衝であるからである。
そこで同じく中米で、反米左翼革命政権であるニカラグアのオルテガ大統領に中国は接近。そして昨年、香港ニカラグア運河開発投資公司(HKNDグループ)を通して、ニカラグア運河が着工。2019年には開通させるという。
WSJ 2015.06.20 ニカラグアの運河計画、住民は土地収用に反発 実現に疑問も
CNN ニカラグア湖、大運河建設の前に見る景色 2015.05.16
↑(長江ダムでも元の赤壁や白帝城も水没したし、文化や自然がどうなっても気にしないのが中国式だと思う。文化や自然は古臭い遅れたものに見えているだろうから。)
このニカラグア運河は、これは軍事的というより経済的な面からの米英への挑戦であるが、注目すべきことだと思う。
ロシアにしても、中国艦隊とロシア極東艦隊が協同するためには、北方領土は返すつもりもないだろう。日本列島はロシアが太平洋に出る際に邪魔なので、太平洋への進出ルートは1本でも多く維持したいはずだ。
ロシアを信用してはならない。
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新冷戦はすでに始まってるでしょうね。
1980年代以降、中国の異常な通貨安と日本の異常な通貨高が並行していますが、それが中国軍拡のエネルギー源です。
日本の財務官僚(灯台閥)、マスコミ(NHK=灯台閥)は何を考えているんでしょうね?
左翼カルトの拠点、、灯台
丁度、個人投資家/ブロガー/ゲーマー の やまもといちろうさん もある意味北朝鮮に感謝しているようです。
米英覇権というよりも自由経済の覇権ですよね。
米英は自由経済に最も忠実であり続けただけです。
で、自由経済はどの国の国民にも好ましい。
米英の自由経済尊重が変わらない以上、米英打破を指向するのは自国民圧迫を指向するのと同じです。
さて、財務官僚やNHKはどうなんでしょう? フランスのような官僚特権国家を指向してるようですが、、(で、米国を嫌ってる)