独身時代の泥酔日記数十年前・・・当時男は実家から通勤していた。時刻は深夜の2時。男は相当酔っている。何度かコケながら、自宅のある最寄り駅に辿り着いた。男は駅前にある公衆電話に向かった。もちろん、この時代、携帯電話などはない。「自宅に電話しなきゃ」深夜の2時だ。なぜこんな時間に電話するのか。これから帰るって言う電話なのだろうか?だとしたら、それは全く意味がない。何の意味もない。しかし男は電話した。ダイヤルを回す。何度もコール音が鳴る。そして・・・「ハイ、××ですが」不機嫌そうな声が電話口に出る。午前2時だ。当たり前である。しかも、男の家族のものではない。「あっ! 間違えました。」このあと男は、何度も電話したが一度とて自宅に繋がる事はなかった。「なぜ繋がらないんだ!」男は公衆電話を叩きつけ持っていた傘を思い切り・・・地面に叩きつけた。ご存知だろう。当時、ビニール傘など存在していない。男の傘は、買ったばかりの高級な傘だ。その傘を男は何度も何度も叩き付けた。男には電話が繋がらないと何かを叩きつけるクセでもあるのだろうか?てか、この男・・・酔っ払うと電話番号を忘れるのだろうか?翌日・・・男は駅前にいた。そこには、無残にも破壊された傘が・・・それはもう、傘、というより、なんかのボロ切れのようである。傘らしきモノの骨組みが残っているのでかろうじて、この物体の元は「傘」なのではなかろうか?・・と、判別出来るほどだ。男はその「傘」らしきものを抱き寄せオメオメと泣いた。馬鹿としか言いようがない。今は昔のお話である。泥酔日記 その2(完)