あわわわわ。
いきなり割り込んできたこの人。
どうやらちょっとおかんむりの様です。
「どこの馬の骨か知らないが、
桃姫ちゃんとランチなんて百年早いッ!
この桃姫ちゃんの追っかけ第一号にしてファンクラブ会長である、この車持が許さんッ!」
桃姫さまにファンクラブ?
桃姫さまは、アイドルじゃなくて女神なんですけど!?
それはともかく。
「やめてっ、何だか知らないけど話をややこしくしないでください。
お願いします(涙)」
「おっつー、車持クン。
ところでさぁ、車持クンって、良いトコの貴族だよね?」
「フッ。この車持、並みの貴族とはワケが違いますぞッ。
由緒正しき名門貴族であればこそ、作法や格式は天下一。
桃姫ちゃんのエスコートは、この車持こそふさわしいッ!」
「じゃあぁ、車持クン。
この少年に礼儀作法を仕込んでよぉ♪」
「えっ?」
「えっ?」
「えっ?」
桃姫さまの一言に、僕も含めてみんなビックリ。
「な、なぜこの車持が、見ず知らずの奴に
礼儀作法の手ほどきをしなくてはならんのだァ!?」
もっともですよねぇ。
いやはや、桃姫さまも無茶を言いますよ。まったく。
「えぇー、ダメなのぉ?
私のお願い、聞いてくれないんだぁ。
車持クンならぁ、私のこと裏切らないと思っていたのに...」
悲しそうな顔をして上目遣いで車持さんを見る。
桃姫さま、これはちょっとずるいです。
「い、いやいやいや!
この車持、桃姫ちゃんの頼みとあれば、例え火の中、水の中ッ!
よし、少年。みっちり作法を仕込んでやるぞ。特訓じゃぁ!」
「わぁい、さすが車持クン!
ありがとぉ♪」
桃姫さま、あざといです。あざとすぎです。
でも怖いから、それは口が裂けても言えません。
「えっと、桃姫様、車持様。
ありがとうございます。」
「いい、少年。
良い出会いも、悪い出会いも一期一会。
様々な出会いを糧として、人生を歩んでいきなさぁい♪」
こうして、少年は新しい出会いによって、道が開けたみたいです。
なんだかんだ言って、出会いの女神としてちゃんと仕事しているんですよね、桃姫さまは。
納得いかない? ええっと、温かい目で見て下さい。お願いします...
「さて。お仕事したし、帰るわよぉ。海ガメくん♪」
「ちょっ、待ってくださいよぉ、桃姫さまー!
置いていかないでくださいよー(涙)」
Fin.