仁戸名のはんじさんのブログ

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     十字路

 グローバリゼーションがもたらした最大のものは、中国の工業化とその行き詰まりだ。冷戦構造崩壊後、中国をはじめ新興国が開放政策を採り、これが巨大な低賃金労働力を国際市場に供給することになり、この低賃金を求めて多国籍企業が競って工場進出を進めたのである。

 中国では、多国籍企業の直接投資による工場進出を契機として、投資主導型の高成長が始まった。新工場の建設とともに生産能力が拡大し、生産性の上昇に伴って競争力が高まり、輸出と経済収支の黒字が増加していった。

 このような輸出投資主導型成長の限界は、生産能力が需要を上回ってくることだ。リーマン・ショック後の先進国の大幅な需要の低下により、中国の輸出と生産は大きく落ち込んだ。これに対し中国は、投資主導型の巨額の景気刺激策を実施した。

 多国籍企業の投資が減少し、経常黒字も縮小する中で、外国銀行からの借り入れに頼って、設備投資と不動産投資は再び加速した。例えば、鉄鋼は8億トンの生産量に対し11億トンの生産能力に、自動車は2500万台の販売に対し5000万台の生産能力にまで拡大した。セメントに至っては、米国が20世紀の百年間で消費した量を僅か2年間で消費するという大投資バブルを生み出したのである。

 この投資バブルが崩壊しようとしている。稼働率が極端に低い中では、過剰設備、過剰在庫のファイナンスは不可能に近い。国内と海外の市場で、企業と不動産投資の主役であった地方政府のデフォルトが顕在化し始めている。

 アジアインフラ投資銀行(AIIB)構想の狙いは、鉄鋼やセメントの過剰生産のはけ口としてのアジアのインフラ投資促進だろう。高成長の延命策としての景気刺激策のやりすぎが、中国の工業化モデルの終焉を早めているといえよう。

 (中前国際経済研究所 代表 中前 忠)  15/ 5/15     日経夕刊

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