魔王が世界に降臨した!
「どーも。魔王です。」
「ご丁寧にどうも。ドッカノ国の王です。
どういったご用件でしょうか。」
「世界を征服しに来ました。」
「ありきたりですね。
ありきたりすぎて、これでは物語の面白みが出ません。」
「では、大量虐殺をしようと思うのですが、どうでしょうか。」
「現実世界でナチスドイツがやろうとしていました。
もっと嗜好を凝らした野望をお願いします。」
「では、文明社会を破壊するため、
知識人や技術者を抹殺しようと思うのですが、
どうでしょうか。」
「悪くありません。
が、現実世界でポルポト政権がやろうとして失敗しています。
もっと個性的な野望をお願いします。」
「事実は小説よりも奇なり、ですね。
しかしそうなると、なかなか思いつきませんね。」
「それではこういうのはどうでしょう?
私の子供をさらうと言うのは。」
「ふむふむ。それはじつに魔王らしいですね。
しかし、お姫様をさらうなんて、ありきたりじゃありませんか?」
「ご安心ください。私の子供は男です。
つまり、王子をさらうのです。」
「それは新しい!
王子をさらいたくなってきました。
しかし、王よ。自分の息子をさらわせるなんて、
愛がないのではないでしょうか?」
「確かに、王子を愛しています。
しかし、国民も愛しています。
国民に被害が及ばないための、苦渋の決断と捉えてください。」
「なるほど、それは勇気ある決断ですね。
わかりました。ぜひ王子をさらわせてください!」
こうして、哀れ王子は悪逆非道な魔王にさらわれてしまった。たぶん続く!
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