先週この欄で、ROEは、新しい会社には都合のいい指標だとしましたが、それでは、古い企業に都合のいい指標はあるのでしょうか。一般的にはあまり知られていない指標ですが、「ためこみ倍率」はどうでしょうか。古い会社ほど、高く出るという点に特徴があります。
ためこみ倍率=資本金勘定/当期利益=BPS/EPS
で表され、利益を配当に回さないで、利益剰余金などの名目で内部留保し、溜め込んだ指数ということになります。
最近話題の会社を調べてみると、
パナソニック 11倍
日立製作所 12
トヨタ 8
三菱商事 15
三井住友FG 12
ユニクロ 6.5
ミクシー 1.2
となって、古い会社ほどこの倍数が高くなっているのが分ります。
10倍程度が普通ですが、当期利益水準が低いと高くなりますので、数値が高ければいいとは限りません。
この指標も、株価との連動性がない点では、ROEと同じです。基本はあくまで株価に連動する3指標、配当利回り、PER、PBR、がメインで「ためこみ倍率」は、銘柄選定の際の参考に使うのが基本といえます。
日本では長いあいだ、配当性向は20%が普通でしたが、アメリカで40%、ヨーロッパでは60%となっているそうです。最近日本でも、もっと配当を増やせという議論が盛んになっていますが、いずれは溜め込んだ資本を株主に還元する時代が来るかもしれません。
その前段階として、ためこみ倍率の大きい会社は、当期利益のほとんどを配当に回すことも考えられます。その際は、「ためこみ倍率」が、脚光を浴びる可能性があるかもしれません。
相場は20,00円を目前に足踏みしていますが、全体の下げに抵抗して、上げている銘柄も多いようです。その多くは、「ためこみ倍率」が高い会社です。今まで成長に重点を置いていた市場の目が、利益水準は低くても、資産をため込んできた古い会社に、目を向けてきた証拠かもしれません。
現在のような天井期では、通常のバリエーションでは、新たな買い手が見つからないところから、買い手を呼び込もうと新しい指標を考えるようです。「ためこみ倍率」は、私のオリジナルですが、ROEは低くても自己資本比率の高い会社を見分けるのには、いい指標のような気がします。
いずれにしろ、新しい指標がもてはやされるときには、株価が行き詰まり状態にある場合が多いようです。その指標の持つ影の部分にも注目して、ボロ株の高値つかみだけは避けるようにしたいものです。