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羊の群れは、地上のパンを欲す

楽天証券の投資セミナーに参加してきました。会場は国技館でした。
http://www.rakuten-sec.co.jp/ITS/investment/in03_seminar.html

澤上篤人氏、森永卓郎氏、広瀬隆雄氏の講演を聞いてきました。(あとは興味無かったので途中で帰りました)


澤上氏は、長期投資こそが投資の本来のあるべき姿、10年、20年、30年のスパンで考える、機関投資家が短期売買を多くするようになって長期投資が下手になった、など色々と長期投資万歳なことを言っていました。投資理論についてツッコミどころが結構あって、意図的に虚実を織り交ぜて語っているのか、本当に変な認識を持っているのかはわかりませんが、ちょっと?と思う点もいくつかありました。もちろんまともなことも言ってました。まあ一般論としてまともって意味で、感心するようなことを言ってたわけではないですが。
それで、質問タイムになってある参加者の方が、「長期投資の場合は売り時が難しいです。どのタイミングで売れば良いのでしょうか?」と質問されたのですが、それに対して澤上氏の答えは、
「大きく下がったところで買ってある程度戻ったら売ればいいんですよ。どうせ年に何回かは大きく下がるのだから、下がった時にまた買うんです。」
・・・えっと、それを世間では短期の値幅取りって言うんじゃないでしょうか。(言行不一致ではという疑問はおいといて、)ファンドの運用方法としては、そういうやり方をやった方がパフォーマンスが出やすいのはわかりますが、定期的な収入がある個人投資家が”長期投資”をする場合はドルコストで積み上げるか大きく下げた時に大きめに買うってやり方の方が良いと思います。
実際、さわかみファンドの運用実績を見ると、相場の上昇局面ではキャッシュ比率を高めているんですよね。そのため2005年後半の上昇相場ではインデックスをアンダーパフォームしています。日本市場はその後下がりましたが、もし仮にそのまま上がり続けるような相場が来た場合、ちまちまキャッシュポジションをいじるようなことをすると、長期投資のうまみである大相場の上昇局面を取り逃がすことになると思います。
さわかみファンドの基準価額の推移をみると、ITバブル後のダメージを上手く抑えたのはすごいと思いますが、運用額が1000億円を超えた2005年頃からはTOPIXと似たような動きになっているので、今のさわかみファンドを買うならコストの低いインデックスファンドを買った方が良いと思います。運用額が大きくなってくれば銘柄も時価総額がある程度大きいものを買うようになって、そうするとインデックスと似たような動きになるのでしょう。
澤上氏は、投資家としての力量はよくわかりませんでしたが、セールスとしてはすごい優秀な人だと思いました。話が上手いです。


森永氏は、この人も話がすごい上手でした。経済の一部分については詳しいけど、全体的なことや、相場のことについては、自分の知っていることだけに捉われて全体が見えていないかなと思いました。まあ、私の個人的な感想ですが。あと、ガチでオタクなことがわかって、少し引きました。女中コスプレをした店員さんと足湯に入れる店とか、嫁プレイが出来る店とか・・・嬉しそうに話してました。


広瀬氏(踏み上げ太郎さん)は、ヘルスケアセクターについてのお話でした。広瀬氏は楽天証券で毎月Webセミナーをやって下さっているのですが、その時の話し方よりも少し緊張しているように見えました。今回のセミナーでは、大手医薬品メーカーのブランド薬(ジェネリックじゃないオリジナルの高い薬のこと)はボッタクリ価格であること、そのため貧しい人々に薬がいきわたっていないこと、研究開発費よりも広告費用などの方がずっと多いこと(化粧品みたい)、2011年以降に多くのブランド薬の特許が切れること、などを話されました。全然知らなかった製薬業界のことが学べて面白かった(interesting)です。


澤上氏も森永氏も、話はすごい上手でしたが、投資や相場についてのつっこんだ話はあまりなかったですね。多くの人が気楽に聞けて、面白い(funny)ことを言って会場を沸かせて、最後に、日本株は安い、買い時ときっぱり言って参加者を安心させて、って感じでした。セミナーというよりコンサートみたい、と思いました。広瀬氏の話の時はそんなに盛り上がらなかったと思いますが、もしヘルスケアセクターに興味が無かったとしても、広瀬氏が示した調査の観点や今後のビジョンの持ち方について学んだ方が、ずっと投資力はつくと思います。

シンプルな因果関係で語る、個人投資家が安心出来る明確な投資方針を示す、断定口調で説得力のある話し方をする。多分、こういうことを言う人の方が、多くの人にとって安心できる存在なのでしょう。実際、そういう人が人気があるようですし。でも、経済も相場も、たった一つの要因で物事が動くわけではなく多くの要因がせめぎあって動いているわけで、それゆえ将来の見通しとも不透明になり、はっきりこうだと断言する方が難しいのではないか思います。
単純で簡単で分かり易い答え、自分のポジションにとって気持ちの良い考え。こういう心地よい言葉こそ、個人投資家としての思考力を奪い投資力を伸ばす妨げになるのではないか、と私は考えています。大事なのは、情報をどう咀嚼し、将来に対してどういったビジョンを持つか、ということではないでしょうか。
 
4件のコメントがあります
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    Tanpanさん
    2008/6/29 21:58
    こんばんは^^

    「カラマーゾフ…」ですね~XX
    私を含めて多くの個人投資家は地上のパンを無視できないんですね。
    自由が怖いのです@@

    それにしても講演された方の特徴を良く掴んでらしてなるほどと感心…^^

    一番最後の部分はしっかりと心に留めておかないとって思いました。。
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    NGTNさん
    2008/6/30 00:19
    Tanpanさん、

    こんばんは。はい、カラマーゾフの兄弟です。ネタ元をわかってもらえて嬉しいです!

    てっとり早く資産を殖やせる話や投資指南してくれる話が聞きたい気持ちは、よ~くわかります。私も目の色を変えて、そんな話を探したりしてました。
    特に、セミナー会場では60歳を過ぎたような年配の方が多かったので、そういう方にとっては、10年後、20年後に大きく殖えればいい、なんてことを言われても、現実問題として手元のお金で生活していかなければならないですからね。(でも、そういう人に限って、焦って退職金を変てこな金融商品に突っ込んでしまったり、投資詐欺で騙されたりしてしまうケースが多い気がします)
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    イカのおすしさん
    2008/7/1 19:17
    こんばんは。具合悪くてコレ行けなかったんですよね~。この日記のおかげで雰囲気はつかめたので良かったです。ありがとうございます!

    澤上ファンドの報告書みたいなのを読んだ事があるのですが(父親が好きで持ってるんです)なんか抽象的できれいな言葉が多くて内容が良くつかめなかったのを覚えています… 投資に関して哲学を持つと言う事は良い事だと思いますけど。
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    NGTNさん
    2008/7/1 19:41
    あらー、それは残念でしたね。日曜は寒かったせいですかね。私は急にお腹が痛くなって、休み時間にトイレに駆け込みましたよ。

    澤上氏は、言葉が上手いですからファンも多いみたいですね。まあ、表に出てくる(本を出したり投資雑誌に登場したりセミナーで喋ったりする)のは大体が、口が上手いか肩書きがある人です。その点で、広瀬さんや春山さんが表に出てきて下さるのは結構すごいことだと思っています。
    さわかみファンドは理念は良いですけど、なんで日本株にこだわるのかがよくわからないなあと思いました。
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