jojuさんのブログ

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★長期保有株主への優遇、短期資金吐き出し要求への規制は誤り

オリックス宮内氏:「株主が100でない」-短期要求から会社守れ

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NM2PU76JIJV301.html

論説のポイント

・ 短期間に企業資金吐き出し(増配、自社株買いなど)を求める株主から会社を守れ。

・ 長期保有株主だけに議決権を与える等の対策を。


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 株式投資とは、投資家が、自らの生涯労働の蓄積たる財産を投じて、企業の経営リスクを請け負い、それに対する見返り(もしくは損失)を得る行為


 経営者も従業員も株主に経営リスクをつけ回ししてるからこそ、経営がどうなろうと、日々の労働の対価(給料)を安定的に得られる。

 これに対し株主は、企業業績悪化での株価下落により、生涯労働の蓄積たる投資財産を大きく目減りさせる。 会社の大損が、株主の投資資金で充当され、株主資産が消えることもある。

  株主から莫大な資金を得てるからこそ、経営者も従業員もリスクから切り離され、株主資金を元手に事業を拡大出来るのです。



 株主が企業リスクを請け負うことは、株式を短期保有だろうが、長期保有だろうが変わらない

 企業経営がマズければリスク増大になるので短期保有化し、良ければ長期保有化するだけのことであり、どちらも企業リスクを請け負うことに変わりない。

 しかし、短期保有株主はリスクを請け負う期間が短いゆえ、株主としての利益(or損失)は小さい。

 短期保有株主が長期保有と比べ、特段、得になるわけでもズルをしてるわけでもない


 両者はリスクやリターンに対するスタンスが違うだけで、それが同一投資家で混在してるのが普通である(混在するのは投資先企業のリスク、リターンが企業毎に異なるから)

 同じヒトがある企業のある局面では短期投資家になり、別のところでは長期投資家になるのです。


 そうした状況で、短期保有株主を差別すればどうなるか?

 短期投資資金は減少し、その分、企業はリスクに弱くなるし、事業拡大しにくくなる。

   (短期投資資金は投資先が頻繁に変わるだけで、ずーっと投資してる点では株式市場全体にとっ

    ては長期投資資金と変わりない。 短期保有差別では短期投資のリスクが上がったり、リター

    ンが目減りする分、リスク耐性の高い長期投資資金しか株式投資に入って来なくなり市場全体

    の投資資金は減る)

 

 また、企業経営の拙さに対し逃げ足の早い短期投資資金が減ることで、企業経営に緊張感が無くなるデメリットもある

 これは、持ち合い株だらけだった一昔前に近い。

 おバカ経営者にも賢い経営者にも悪平等に株主資金が集まるので、まじめな経営者ほど損になり、国全体として経営能力は向上しなくなり、経済成長は停滞する



 さらに言えば、短期保有株主だけが、短期的利益吐き出しを求めるわけではない

 長期保有株主も、企業成長無く、企業が無駄に内部資金を退蔵し続けるならば、短期的利益吐き出しを求める。

 それは、企業の内部資金は、株主資金を元手に稼ぎ、従業員、経営者に給料を払った後に残る「株主のお金」だから当然の要求である。

 株主がそれをしないのは、経営者がそのお金を更なる企業成長に充て、株価を上昇させてくれる期待があるから。

 それなのに、経営者が無為に資金退蔵ならば、株主は配当や自社株買いでお金を返して欲しいと要求せざるを得なくなる。 これはリスクに見合うリターンが無いのだから当たり前で、それは株式保有の長短に依らず同じ

 この点からも長期保有優遇策は意味が無い


 もし、上記のようなダメ経営に、株主の短期資金吐き出し要求が無ければ、ダメ企業は淘汰されず、ダメ企業にも人材・資金が流れまくり、経済成長は停滞することになる


 では、逆に、良い経営なのに、投資家が短期資金吐き出しを要求することはあるだろうか?

 それはまずない

 なぜなら、吐き出しでの利益(インカムゲイン)は企業成長、株価上昇での利益(キャピタルゲイン)よりも格段に小さいからである

 短期資金吐き出しを求める提案は、良い経営をしてれば、多くの株主に否決されるだけで実現可能性はほとんどない。

 ほとんどあり得ないデメリットのために、デメリットだらけの長期保有優遇策を導入するのは逆噴射である



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<結論> 株式の長期保有優遇はすべきでなく、短期資金吐き出しの株主提案も規制すべきでない。

上記の理由、、、

・ 株主保有の長短は企業経営の優劣によって決まる。

・ 長期保有を増やしたければ、(投資リスクを減らし、リターンを増やす)良い経営を長く続けるしかなく、制度的に長期保有優遇をやっても投資資金が減るだけで逆効果。

・ これでは、企業は投資資金を存分に集められず、経営リスク増大、成長力低下となる。


・ 長期保有優遇では企業経営に緊張感が無くなり、この点からも経営リスク増大、成長力低下になる。 結果、長期保有に耐えられる資金が減る悪循環に陥る。


・ 株主が短期資金吐き出し(株主資金の返却)を求めるのは、経営の拙さに起因し、株式保有の長短とは関係ない。 この点からも長期保有優遇策は無意味である。

・ ダメ経営に株主が短期資金吐き出しを求めなければ、ダメ企業は存続し続け、人材・資金がそこに張り付き続け、経済成長を停滞させる。


・ 良い経営に対し短期資金吐き出しの株主提案が可決される可能性はまずない。 0%に近いデメリットを防ぐべく、デメリットだらけの長期保有優遇策を導入すのは逆噴射である。



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 日本では、長期保有優遇で起きうる問題がもう一つある。

 それは、企業経営への官僚支配が強まる点である


 年金基金のような巨大資金は、資金が巨大ゆえ、多くの企業に分散投資せざるを得ず、そのため、大抵の企業に対し長期保有投資家になるのだが、日本では年金基金運用の政治からの独立(=国民代表たる政治家からの独立)が進められ、近年、年金運用が官僚のやりたい放題になりつつある


 こうした状況で長期保有優遇を進めれば、企業経営の年金基金依存、官僚依存が強まる懸念がある。

 

 そのうえ、社外取締役が義務化され、そこに官僚の天下りが入ってきている状況もある


 年金運用の政治からの独立、長期保有優遇、社外取締役の義務化と天下り、、、行き着く先は企業の実質国有化(官製企業化)であり、企業競争力の低下、経済成長の停滞、国民所得低迷、投資資金の海外流出である


 政治(=国民代表たる政治家)が規制すべきは民間でなく、官僚

 市場原理(公正原理)が働かない官僚にこそ、政治は監視と規制を強化すべき。 



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