■買い一巡の公的マネー・海外投資家
「池の水位が下がると泳ぐ魚の姿がよく見えてくる」。三菱UFJモルガン・スタンレー証券の藤戸則弘・投資情報部長はそう話す。
池の水位とは、市場の売買の盛り上がり。泳ぐ魚は活発に売買する投資主体のことだ。国内の公的マネーや海外の年金など、中長期投資家の日本株買いには一巡感があり、今、池で元気に泳ぐのはヘッジファンドや信用
の個人など、短期マネーが中心という。
投資主体別の売買動向をみると、年初から3月末にかけて、日経平均が2万円目前まで駆け上ってきた相場を誰がリードしてきたかが一目瞭然でわかる(グラフ)。
まず、年初に利食いから入った海外勢の売りを一手に吸収し、相場の強い地合いを演出したのが信託銀行だ。その背後の投資家は、日本株の組み入れ比率を急速に高めてきたGPIF)などの公的マネー。しかし信託銀行の買いは2月中には一巡し、相場の上昇とともに様子見に転じた。
大和証券の熊沢伸悟ストラテジストの試算によると、GPIFの運用資産に占める日本株の比率は、昨年来の積極的な買いと株価の上昇ですでに22%程度に上昇。上限のメドとなる25%まではあと3%となった。ここからさらに急いで比率を上げる理由はなく、当面は「相場が下がれば買い、上がれば売りという慎重な姿勢を継続する」とみられる。
2月以降、公的マネーに代わって主役となったのはロングオンリーと呼ばれる海外年金などの中長期投資家。2月2週から3月2週までの海外勢の買越額(現物株・先物合計)は3兆円を越え、トヨタやメガバンクなど主力大型主導の相場をけん引した。だが、その買いも3月下旬からはトーンダウンし、「ロングオンリーは日本株の組み入れをいったん終えた」という見方が強まっている。
一方、2月半ばから先物中心に日本株を買い上げてきた短期マネーも足元では売り越し基調。ただし、「年初からの売買動向をみる限り海外の短期マネーはまだ買い持ち高をかなり抱えたままで、売りの機会を狙っている」(藤戸氏)という。公的マネーや海外の年金が、いったん買った株式を中長期で保有するのと対照的に、ヘッジファンドや証券会社の自己売買
部門などは、買えば短期のうちに売り、売りから入ればその後買い戻す。