英文法をないがしろにしていると、
一見、英会話を流暢に話しているように見えても、
中身がズタボロになりますよ。
そういう予想されるであろう言説がメインになっているのだが、
この書籍の魅力は他にある。
例えば、翻訳の場合。
著名な学者による翻訳ミスを提示しながら、
日本語と英語のちがいについて学べたりする。
また、夏目漱石がどれだけ優秀な頭脳を持った人間だったか、
垣間見えるエピソードがオモロかったりする。
そして秀逸なのは、母国語をないがしろにした場合の弊害についてだ。
著者が実際に遭遇してきた、
帰国子女にまつわる複数の悲惨なエピソードを読むと、
英語学習の低年齢化がホントウに大丈夫なのか不安になってくる。
うまくいっている確率が、
10%程度のように思われる著述を読んでいると、
なにやら得体の知れない恐怖を覚えてしまう。
★「英会話不要論」
行方昭夫著 文春新書 700円+税 2014.10.20.第1刷
著者は言うのである。
小さいうちは他の教科も勉強しないと駄目になる。
その間に、しっかりと英文法を学んでおいて、
必要になったら、さらに英語に磨きをかける姿勢で十分である。
*
商用メールの中に、翻訳ソフト最新版を謳うものがあった。
その翻訳プログラムの概念を知ると、
その内に、英語学習が不要になったりするのではないかと思ったりする。
英語で書かれた電子書籍と、
この翻訳ソフトを組み合わせたら、どーなるのか知りたくなってきた。
実物書籍だと高価な洋書でも、
電子書籍なら、かなり安く購入出来そうだし。
けれど、こんなことを言っていると、
行方先生は怒るだろう。
「翻訳がそんなに甘い世界ではないことを、ぼくはこの書籍で書いたのですからね」
って。