白くて大ぶりで清楚な花を咲かせる白木蓮(ハクモクレン)。その花は、ソメイヨシノよりも少しだけ早く開花します。通りや公園などでは白木蓮の白い花が満開の時期を迎えています。
話は変わりますが、昔の書物にこんな話があります。
一人の旅人が東から西へ向かって歩いていると、突然前方に業火渦巻く火の河と激しい流れの水の河があらわれ、後ろへ戻ろうとすると盗賊や獣が襲いかかってきました。旅人は窮地に陥りますが、西へ延びる白い細い道を見つけます。
河に呑み込まれずに白道(びゃくどう)を渡りきれるかどうか分からず立ちすくむ旅人に、「心を決めてその道を渡りなさい。信じなさい。河を恐れることはない」と声がします。
その声に勇気付けられ旅人は西に進みますが、今度は背後から「引き返しなさい。その道の先には何もない」との声がします。しかし旅人はその声に耳を貸さず白道を渡りきりやがて西岸に辿り着きます。
この話で東は現世(此岸)、つまり今いるところ。西にあるのが極楽浄土(彼岸)で旅人の目的地。怒りや憎しみで燃えたぎる火の河、何もかも流しつくす欲望の心をあらわす水の河、そして背後の声は煩悩です。
怒りや憎しみの業火に焼かれることなく、欲望に流されず、我愛、我見、疑い、迷い、慢心といった煩悩を振り切って進んだ先に目的地があるということです。