民主トップへの波及で追及は失速
いつ民主党へのブーメラン返しがあるかと思っていたが、やはりあった。
補助金企業の寄付が首相・安倍晋三だけでなく民主党代表・岡田克也にも波及したのだ。
与野党に拡大したことが、何を意味するかと言えば、補助金企業ほど政治家にとって「おいしい企業」はないという現実だ。政治資金規正法は議員立法だけあって立派な“抜け道”を数多く作っている。
今回の“脱法すれすれ事件”防止策は、とりあえずこの“抜け道”をふさぐための法改正に与野党が協議機関を発足させることだ。
規正法改正の核は「知らなかった」では済まなくすることと「調査研究費」はそのまま調査研究費に充てるべきであるということだ。本来なら政党助成金をもらいながら企業・団体献金に固執する自民、民主両党は、その方針を改めるべきだが、賄賂性が伴わない限り日本的な政治風土の中では維持せざるを得ないだろう。
安倍に波及したのにはびっくりしたが、どこがリークしたか知らないがちゃんとバランスを取って岡田にも波及している。そればかりか野党は生活の代表・小沢一郎や企業・団体献金を全面禁止する法案を衆院に出した維新の党の総務会長・片山虎之助や政調会長・柿沢未途にまで波及。
自民党内にはさらに、1月に安倍が衆院予算委で指摘した民主党幹事長・枝野幸男がかつて革マル傘下と言われるJR東労組から4年間にわたって総額404万円の資金提供を受けていたといわれる問題を取り上げて古傷をさらに追及するという動きもある。
要するに民主党はその党体質から、政権の政治資金問題を追及すれば必ずブーメラン返しに遭うことが多い。小泉内閣閣僚の年金未納問題を「未納3兄弟」などと追及していた菅直人本人が、1996年当時の所管大臣の厚相であったにも関わらず年金に未加入だったことが判明。代表を辞任し、お遍路に出たのが良い例だ。
また民主党は政権時代に補助金企業から献金を受けている。補助金が交付された企業から、自民党や民主党が2億6千万円を超える、違法の疑いがある献金を2010年、11年に受けたことが、総務省公開の11年分政治資金収支報告書などで明らかになっている。
民主党は政党支部で献金を受けている。したがってブーメラン返しの結果、補助金問題の追及は終息に向かう公算が大きい。
名前が挙がった安倍も毎度こうしたケースでは顔を出さずにはいられない小沢も言うことは一致している。安倍が上品に「こちら側には知り得ない献金はある。そもそも知らなかったわけだから、これ以上言いようがない」と答えれば、小沢はざっくばらんに「『あんたのところは何もしていないよね』といちいち聞いて受け取るわけではない」とこれまた分かりやすい説明だ。さすがに政治資金問題でのベテランは言うことが違う。
このように与野党が同じ穴のムジナで、一見関係がないようでも「同類の仲間」であることが判明した以上、ここは与野党共に国民に対してざんげして悔い改めなければならない。
いかにして悔い改めるかと言えば、紛れもない悪法である政治資金規正法の改正である。安倍も3日の答弁でようやく「違法性について、国民の皆さんは大変分かりにくかったと思う。
政治資金の規制の在り方は、政党や政治団体の政治活動の自由と密接に関連しており、まず、現行法制のもとで問題が生じないように何ができるか、そのうえで、規制そのものの在り方はどうあるべきか、各党、各会派で議論していただくべき問題だ」と、与野党に討議を呼びかけた。民主党もさらなるブーメラン返しを恐れるならこれに乗るべきだ。そもそも政治資金規正法は1948年に議員立法で出来た。当時は今とは比較にならないほど資金源と政治家は癒着していた。自民党と財界が癒着すれば、社会党と労組が癒着、いずれも最大の資金源となっていた。
その風潮の中での立法措置であり、あらゆる手段を講じて抜け道を沢山作っていたのだ。規正法の歴史は当初に作った抜け道をいかに正すかの歴史であった。
しかし多くは議員立法で直すから、これまた抜け道にさらなる抜け道を作ったりするのだ。今度の改正の焦点は、補助金企業であることを「知らなかった」で済むことを改めることだ。
昔に比べれが額が小さいが、それでも国民の血税を自らに還流することは政治家としてもっとも慎まなければならないことだ。政府は交付金企業は常に政治家の手元に送付し、議員がチェックしながら政治資金を受け取れる制度にするべきである。
具体的には悪の根源22条の、「規定に違反してされる寄附であることを知りながら、これを受けてはならない」を削除せよ。また補助金から1年後まで献金を禁ずる条項も削除だ。
1年後なら良いではザル法もいいところだ。さらに「試験研究、調査又は災害復旧に係るものを除く」も削除の必要がある。研究、調査は本来そのために使うべきであり、政治家に還流すべきではない。
ましてや災害復旧費などは、災害を食い物にする政治家を増やすだけではないか。最低限これくらいの法改正をしなければ、国民の政治不信は募る一方であろう。