今日は桃の節句・ひな祭りです。上巳(旧暦三月最初の巳の日)の頃に咲く
桃は、安産や強い生命力の象徴とされ、中国ではその実を不老長寿の仙薬とす
る伝説もあり、さらに魔を祓う力もあるとされていました。
そんな桃の花がひな壇に添えられるのは、女の子の健やかな成長と長寿を願
ってのことです。
ところで、衛生状態が悪く医療技術が未発達な昔は、平均寿命も今ほど長くはありませんでした。そうした昔に八十過ぎまで生きた江戸時代の学者・貝原益軒は、著書の「養生訓」にて長生きの秘訣を説いています。
貝原益軒は、長生きし、人生を楽しむためには飲食の欲、好色の欲、眠りの欲、いたずらに喋りたがる欲といった内欲を抑え、怒り・憂い・悲しみなどを少なくするのが良いとしており、例えば下記のように教えています。
「古人、禍は口よりいで、病は口より入といえり。
口の出し入れに常に慎むべし」(養生訓・第三巻 飲食上)
また、貝原益軒には次のような逸話も伝わっています。
園芸好きの益軒は自分の庭に季節の花を植え大切に育てていましたが、家を留守にしたある日、留守を任せていた若者が不注意で、益軒が大事にしていた牡丹の花を折ってしまいました。
恐縮している若者に対し益軒は「私が牡丹を植えたのは、楽しむためで、人を怒るためではない」と言って安堵させたそうです。
平均寿命が八十歳を超えた現代においては、もっと「長く生きたい」という人よりも、もっと「良く生きたい」と、質を願う人が多いかもしれません。そういった方にも「養生訓」は多くのヒントを与えてくれます。