内容要約
・投機の陶酔的熱病(ユーフォリア=バブル)について
①要因
1)金融に関する記憶は極度に短い
・金融上の大失態があってもそれは素早く忘れられてしまう。その結果として同一またはほとんどの同様の状況が再現すると新しい世代からは金融および経済界における輝かしい革新的な発見であるとして大喝采を受ける。
・投機のエピソードに共通しているのは、世の中に何らかの新しいものが現れた、という考えがあることである。またそれに輪をかけた「てこ(レバレッジ=借金投機)」の再発見である。あらゆる投機のエピソードには、金融の手段または投資機会について一見新奇で大いに儲かりそうなことを発見して得意
になるという面が常にある。
2)金と知性とが一見、密接に結びついているかのように思われている
・投機の渦中にある人は富の増大を経験する。この致富は自分の洞察力ないし直観がすぐれている結果だと思いたがる。投機は投機の渦中にある人の知性を買収し、強い金銭欲にとりつかれさらに価格は上がるだろうと教える自分の判断を自分だけが持っている格別な知恵であると信じ込んでしまう。
②大失敗から救われるために
1)金融上いかがわしいことまたは大衆的な陶酔的熱病を、規制によって無くしてしまうのは、実際上できない。
2)唯一の矯正策は高度の懐疑主義
・あまりに楽観ムードがあれば、それはおそらく愚かさの表れだと決めてかかるほどの懐疑主義
→興奮したムードが市場に拡がったり、投資の見通しが楽観ムードに包まれるような時や、特別な先見の明に基づく独特の投資機会があるという主張がされるような時には、渦中に入らない。たぶん、そこには機会があるかもしれないが妄想と自己欺瞞があるだけという場合の方がむしろ多いことは歴史が十分に証明している。
・巨額な金の取得・利用・管理は知性とは無関係であると考えるほどの懐疑主義
・陶酔的熱病、控え目に言っても集団的狂気としか言いようのないものへ突っ走ることに共通する特徴を明瞭に認識する。このような認識があって初めて、投資家は警戒心を持ち、救われる。
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1991年に訳書の初版が出ています。書かれている内容がそっくりそのまま現在にもあてはまることに驚きを覚えました。繰り返し読む価値があると思います。バブルではないけれども2013年の前半の上昇相場とその後の暴落局面を思い出したり、サブプライム問題を思い出したり。金融史を学ぶことの大切さを教えてくれる一冊でした。