「百聞は一見にしかず」で反日教育のギャップ解消だ
13日、上海の日本総領事館で開催されたビザ発給要件緩和に関する旅行会社向け説明会には多くの関係者が出席した(共同)
訪日観光から帰国した中国人がブログや中国版ツイッター微博(ウェイボ)などで、日本で受けた「感動」を綴(つづ)るケースが増えている。
ホテルや百貨店、観光地で丁寧なおもてなしを受けた一部始終や、忘れ物や落とし物がすぐに手元に戻ってきた経験など、多くの日本人にとってごく普通の出来事でも興奮ぎみに投稿するようすは興味深い。
なかには、日本人があまり気に留めていないサービスに関心を示す投稿もある。
地下鉄駅の自動券売機の使い方がよく分からず、呼び出しボタンを押したら券売機の隣の小窓から駅員が顔を出し、親切に教えてくれて感動したというケース。ショッピングモールでいくつもの店の買い物袋を抱えていたら、最後に買い物をした店は他店の商品までまとめて大きな袋に入れ直してくれ、さらには袋のプラスチック製の取っ手が手に食い込まないよう柔らかいクッション材を巻いてくれた体験談などだ。
以前に比べれば、中国でも都市部では顧客に対するサービス精神はずいぶん向上したようにみえるが、それでも買い物客に礼のひとつも言わずにおつりを投げてよこす店員や、レストランで自分の注文の取り間違えを謝るどころか、客が悪いと言わんばかりに不機嫌になるウエートレスは後を絶たず、目くじらを立てる方が煙たがられる始末。それが普通だと思っていた中国人が日本で感じる驚きは大きいに違いない。
サービス以外にも自動販売機の多さや商品の多彩さへの感動、空港や駅などでの案内表示板のわかりやすさ、年配の観光客や障害者にも優しいバリアフリーなど、工夫が凝らされた街のようすを写真やビデオ付きで好意的に紹介する投稿があふれる。
ぎくしゃくする関係や根深い反日感情とは裏腹に、こうした好反応の広がりが、訪日客急増にも関係しているのではないか。
日本政府観光局(JNTO)の推計によると、昨年1~11月に日本を訪れた中国人は約222万人。前年同期と比べて82・2%も増えており、通年では240万人を突破したもようだ。もちろん中国からの訪日客が200万人を超えたのは初めてだ。
富裕層や中間所得層に起きている海外旅行ブームの中で、円安効果によるショッピングの割安感が、日本への旅行人気を急速に押し上げている。同時に中国人に対する訪日のための査証(ビザ)発給条件がここ数年、徐々に緩和されたことも大きい。
19日からは、富裕層に発給している数次ビザの有効期限が従来の3年から5年に延長されるほか、中間所得層に課していた収入状況の要件が一段引き下げられて、ビザ取得が可能な層の裾野がグンと広がる。
日本の政府関係者は、「訪日旅行から帰った中国人から日本を足蹴にするような感想を聞いたことは一度もない」と話す。
しかもネット上で、「小さい頃から将来は侵略戦争で中国人を苦しめた小日本(日本人に対する蔑称)を打倒することばかり考えてきたが、出張で訪日したら、現代の日本人があまりに優しすぎて信念が揺らいだ」「誰もが人に迷惑をかけてはいけないと考えて秩序だって生活している日本人をみて、『日本人は常に戦争を企てる軍国主義者だ』との中国メディアの宣伝はウソだと初めて分かった」など、まさに百聞は一見にしかずの反応を示す中国人もいる。
ただ、「化粧しないで買い物をしていた私を日本人の店員は軽蔑したような目でみた」「銀座の店で中国人どうしで会話していたら静かにするように店員に怒られて怒鳴り返した」などとする発言や、「日本でカネを落とすことは非国民だ」との相変わらずの批判もめだつ。それでも共産党のプロパガンダだけではない「本来の日本人の姿」を自分の目で見てもらうことの価値はあると信じたい。
産経ニュース【視線】2015.1.19