川は流れる 11月15日(土)8時53分

堅実さん
川は流れる  仲宗根美樹

(物事を解決するのに、正面向かって解決する方法。その事から逃げて解決する方法があります。そして、そのままにして、何もしないで、そのままの状態でいる方法もあります。今までは、向かうか、逃げるかの方法がよく言われておりましたが、そのままの状態で、放っておいて時の経つのを待つという方法が解決する方法として、良い場合があるのではと、最近考えるようになりました。時が解決するのです。そのままにしておけば、周囲が変化して、情勢が変わってくるのを、待つという方法です。例えば、職場でも人事異動により状況変化が、あります。)


  広瀬川は、前橋市の中心部を流れる、人口の川である。日が沈み、夜も深まりつつある。その川沿いに女がいる。
 「畜生。」女は小声で言い、缶ビールを一口飲み、広瀬川沿いの歩道を歩いた。酒を飲みながら道を歩くというのは、男でも滅多に見ない。女が、だらけた歩き方で、酒を飲みながら歩くのは、余程の訳があるのだろう。


 よろよろと力無く歩きながら、その先に若い女を見つけた。酔った女は、その若い女から数メートル離れた処で止まった。しばらくそのまま、無言でいたが、やがて口を切った。

「あんたも、こんな処で、立ち止まっている処を見ると、何か事情があるね。」

「しかし、事情は聴かないよ。聞いたところで、何もしてやれないからさ。」
「見た処。会社の帰りの様だね。会社で何かあったのかい。」
「しかしだよ、そのままに我慢しているということも大切だよ。私のようになりたくなければ、じっと我慢していることだね。そうすれば、あんたの悩みは解決することもあるよ。」


 そう言って、女は去っていった。静寂と、僅かな、川のさざ波の音が聞こえる。遠くには、ネオンと車の音が聞こえる。


 若い女は思った。さっきの人は、未来のわたしかもしれない。未来のわたしが、今の私に警告してくれたのだ。ここはすこし暗すぎる。


 そうだ、嫌なことばかり続くが、このままにして、生活のために、仕事をしていこう。そうすれば、なんとかなるかもしれない。たとえ、なんとかならなくても、それでいいではないか。もう、あの人は戻ってこない。この現実を認めよう。この川の流れのように、時は絶え間なく、流れていく。そして、全てを流してくれる。辛いときは、この川の流れを見ればいいのさ。


 そして女は静かに歩きだした。後には、ただ、時折、ざぶん、ざぶん、という川のさざ波の音が聞こえる。夜は更に深まった。そして静寂である。


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