以前、証券会社では「この株は絶対上がります」といって、株を勧めていました。今こんな証券会社はどこにもありません。それどころか、この業界では「絶対」という言葉は、禁句にさえなっています。本当に、「絶対に儲かる株」はないのでしょうか。
投資をする場合に「絶対の真理」があれば、これに従った行動を取れば儲けられ、反すれば損になります。夢のような法則ですが、なんとか見つけたいものです。
昔からある株のことわざや格言の中にありそうです。でも、投資に当たってのすばらしい心得はたくさんありますが、求めている絶対の真理は見当たりません。それどころか、「明日の相場は分からない。株に絶対はない」という格言も目に付きます。絶対の真理は無理のようです。
チャートの世界はどうでしょうか。最近はチャートで株価の天底を予測する方法があるような宣伝も聞こえてきます。チャートで明日の株価が分かれば、絶対の真理に一歩近づけるかもしれません。
ただ、秘法が一般に知れわたると、方法とは反対の売買をして儲ける人もでてきます。秘法を信じた人が大損をすることにもなりかねません。チャート分析では、起こった事象についての説明はできても、将来の動きを予測するのは無理なような気がします。
ファンダメンタル理論からも同じような事象が見て取れます。チャートもファンダもカードの裏表を当てるよりは、確度が高い方向性は示してくれるかもしれませんが、絶対とまではいえません。
以前の日本経済新聞の土曜日版に「成功しか見えないワナ」という題で、「株価の騰落を10日間続けて当てる」ことは誰でもできるとして、例をあげて説明していました。
それによると、1万人にメールを出し、5,000人には「今日は上がる」残りには「下がる」と伝えます。翌朝には予想が当たった5,000人のうち、さらに半分ずつに当落予想を伝え、これを繰り返すと、10人ほどの人は「10日間続けて当たった」と証言することになるそうです。
このことは、はずれには目を向けず、当たりだけに注目してしまう心理で、行動経済学では「生き残りバイアス」と呼んでいるようです。この現象を使うのは詐欺の常套手段で、絶対勝てる投資方法とか、必ずやせるダイエット法といったキャッチで、成功例だけを繰り返し流しています。
リーマンショックの大暴落のさなか、2008年10月8日の株価が7,000円を割ったときのことです。日経CNBCのテレビ番組で、コメンテーター10人に今後の株価を聞いていました。結果は、わずか1人を除いて6~5,000まで落ちると予想し、中には4,000円まで落ちると予想していた人もいました。
このように株価予想は、情報、資金、経験に恵まれたプロでも当たらないのが当たり前なのです。当たらなくても翌日は平気で、またもっともらしい予想をしています。すべて、「株の購入は自己責任で」となり、なにをいっても責任は取らなくてもいい原則が支配する社会なのです。
そんな社会に、「絶対に儲かる投資法」などあるわけがありません。これだけは「絶対だ」と断言できます。
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「ワッハッハハ……、それでお終いかよ!」突然天からの声です。
「……」
「それじゃ、『絶対に儲かる投資法』を期待して見ていた人は、どうなるんじゃ!」
「嘘ついちゃいかんよ!」
「だから、始めからクエスチョンマークを付けていたじゃないですか」
「言い訳いう暇あったら、もっと勉強せい!」
「お言葉ですが、あまり時間がありません」
「それ!それじゃ!時間だよ、時間」
「……」
「投資で、絶対に儲かるのは、時間じゃよ!時間!」
「……」