1-5 株式市場の二面性

yuhsanさん
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株には、二つの面があります。勝ち負けを争うゲームと、長期にわたり資産を増やす面です。株式投資本来の目的は、投資によって企業活動を支援し、経済を発展させ国を豊かにし、その果実として値上がり益や配当を受け取り、個人資産を増やしてゆくということでした。昔の投資の本には、必ず書いてあったのですが……。


1990年のバブル崩壊以降、それまで個人が中心だった売買主体が機関投資家に変わり、さらに2000年以降は、外国人が占めるようになりました。この間、コンピューターの普及と情報革命によって、情報の大衆化と国際化が進み、つれて売買手数料が大幅に引き下げられ、取引量の増大に繋がりました。


個人投資家も機関投資家に負けない投資環境になった結果、利幅で儲けるより数量でこなす売買方法になり、株式売買がより短期に変わってゆきます。短期運用では相場がどちらに動いても、売り買いとレバレッジで利益をあげることができます。


日本経済新聞によると、投資家の9割が短期投資家とあります。長期投資が儲からなくなったのは、個人投資家だけではありません。年金、保険、銀行と長期で資金を運用している機関投資家も同様です。


長期投資で儲からなくなった機関投資家は、運用先を株以外のものに移すか、ヘッジファンドに委託するようになってきました。これも短期売買の一因となっています。日本経済も証券会社も、短期投資家が中心となっている現状は、日本経済がデフレから完全に脱却するまで、しばらくは続きそうです。


ただ、短期投資では、投資の利益は売買の差益から生まれるため、差益の取り合いとなります。このため、儲けられる人が出れば必ず損失者が生まれます。カジノでポーカーをするのと同じで、勝者は敗者の掛け金を取りあげることで、儲けを出すことができるのです。これでは、証券会社や取引所は儲けになるかもしれませんが、個人投資家はカジノでギャンブルをやっているのと変わりません。投資によって企業活動を支援し、経済を発展させようとする投資本来の目的は、どこへ行ってしまったのでしょうか。





流れの変化は、徐々に現われてきています。アベノミクスにより、経済環境が好転し、デフレ経済からの脱却がはっきりしてくると、リスク資産に目が向くようになり、ほとんど利益を生まない現預金や国債から、株式への移動が起こってきました。長期に株を保有しても、株価の変動リスク以上に値上がりや配当収入を期待する人たちが増えてきたのです。


市場を動かす力が、外国人のヘッジファンドから、国内の年金、事業法人、長期保有を目的とした個人に移り、徐々に個人投資家の資産形成を助ける方向に動いています。





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