疾走(第12章)

投財堂さん
投財堂さん
第12章(逃げる)女は自分のバッグの中を確認した。なかった。バックに入れた携帯電話がない。しかも、バッグのファスナーは開いたままだ。開いたままのバッグ・・・そして走った。財布とかキーケースは残ったままなので恐らく、スリに遭ったという事はないだろう。女は思った。男と接触した時、男がタブレットを落としそして自分もバッグの中から携帯電話を落としていた・・・としたら?イヤホンの音量を大きくしてるので全く気がつかなかった。人の落としたものは気がついて自分の落としたものには気付かない。何とも皮肉な話である。多分あの人は、私の携帯を拾って・・そして追いかけて来た!それを勘違いして逃げてたとしたら・・・無意識のうちに男の呼び名を「あの男」から「あの人」に変えていた。女は立ち止まり、そして振り向いた。10メートル位後方に男の姿が見える。しかし男は立ち止まったいた。立ち止まって何かをしている。電話のようだ。男は携帯電話を耳に当て、電話をしている。しかし、気になるのはもう一方の手・・だった。男は右手で電話をしている。そしてその左手には・・・何やら携帯電話らしきものが・・携帯が2台?あり得ない事ではない。携帯を2台持つだろうか?仕事用とプライベート用という事も十分考えられるしかし、女は確信した。あれは私の携帯だ。そして男に近づこうとした時・・・男は猛烈な勢いで走り出した。逆方向に・・・どうしたの?女は男を追い始めた。(第13章へ続く)第1章はこちら→第1章
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