第10章(逃げる)もしかしたら・・・自分を追ってくる男・・・悪意を持って追って来るのではない・・としたら?何が考えられるだろうか?考えてみれば、通勤路が同じというだけで男に何かの意図がある・・と感じたのは女の直感に過ぎない。何の確証もなかった。何か含みがあるのではないか・・と思った矢先あの男が走り出した。・・・こちらに向かって。しかし・・・よくよく考えてみれば・・・あの男は、いつから自分を追って来ているのか?女は考えた。最初・・女が駅に着いて自宅に向け歩いてる時は自分を追いかけてくる気配はなかった。追われてる・・という気配を感じたのは・・・そうだ、あの時・・・走る男はもう1人いた!女はその時の状況を思い出す。歩いていると・・・いきなり左の路地から現れ・・そして自分と接触した。男は一言「すいません」と言うとそのまま 90度方向を変えて走り抜けて行った。その際、男はタブレットを落とし・・・落としたタブレットを自分が拾い・・仕方なくその男を追いかけた。追いかけたのは、男の走って行った方向が自分の帰路と同じだったためだ。自分も男を追いかけていたのではなかったか?追われる恐怖で、女はその事をすっかり忘れていた。さらに、女がタブレットを託した男もタブレットを落とした男を追い、走って行った。タブレットを落とした男自分によりそのタブレットを託された男自分を追う男そして自分。女は時計を見た。午後8時。自分を含めて、4人の人間がこの時間、この道路上を走っている。落としたモノを渡すために・・・ならば・・・後ろから追って来るあの男もそう思った女は、自分のバッグの中を確認した。(11章へ続く)第1章はこちら→第1章