第7章(逃げる)ボケッ~としてる男にタブレット型端末を託し後は任せたわよ、と言わんばかりに逃げる女。女は道を右に変えた。タブレットを渡した男は当然、直進して行ったが・・また後ろを振り返る。追って来る。あの男は追って来ていた。なに?何なのよ・・あの男。時刻は間もなく午後8時になろうとしていた。自分を追いかけてるのは間違いない。しかしこんな街中で追いついたとして・・何をするというのだろう?まさか、人通りの多いこんな場所で襲うだろうか?冷静に考えてみると、何かおかしい。もしかしたら・・・(俺)あ!あの野郎・・信号無視しやがった!どうする?俺はどうする?俺も赤信号を無視するか?まさか!そこまでする必要もない。俺は自分の手元を見た。見知らぬ女に渡された、見知らぬ男のタブレット。こんなもののために、信号無視?冗談じゃない!しかし、この信号は非常に長い。このまま青に変るのを待ってたら男の姿を失うのは火を見るより明らかだ。ならば・・・俺は信号の下でもう一度叫んだ!すいませ~~ん、前の人、前を走る人ぉ~~タブレット落としてるンですけどぉ~~男は赤信号を渡り切ったところだ。全く俺の声に気付かない。道中、何度叫んでも男は気付かなかった。なぜだ?なぜ振り向かない???イヤホン?耳にイヤホンをしているのか?その可能性はある。でなきゃ、俺がこれだけ大声で呼んでるのに気がつかないわけがない。そう思うと俺は怒りがこみ上げてきた。手にしたタブレットを見る。地面に叩きつけてやるか!?この怒りは、前を走る男に向けられたものかそれとも拾い物を俺に渡したあの女に向けられたものなのか・・・判らなかった。判らなかったが、ただ一つ判った事。それは・・・俺が走る理由はなにもない!という事だ。武士の情けだ、警察にだけは届けてやろう。そもそも、この警察に届ける行為だってあの女がやるべきもので、俺じゃないはずだ。なぜだ?なぜ俺がここまでせにゃならん?そう思うと再び怒りが・・・そして、手にしたタブレットを大地に叩きつけようとした。(第8章へ続く)第1章はこちら→第1章