「波を読み波に乗る」のは、私の投資法の基本です。
「そんなこと、お前にいわれなくても、みんなやっているわい」
「じゃ…、じゃお聞きしますが、儲かっているんでしょうね」
「……」
株は「安く買って高く売れば」必ず儲かります。だからといって、安いと思って買った株が、高く売れるとは限りません。波を読み間違えているからです。
最近の相場の特徴は、
「日中の値幅が少ない」
「出来高が少ない」
「海外市場での動きで相場の位置が決まる」
という動きです。
昨日はわずかばかりの下げとなりましたが、9日間の連騰にもかかわらず、ゆるい階段を一歩づつ登っていくように見えます。為替が円安方向で、企業業績の向上が期待できる上に、公的資金が相場を持ち上げているのですから、当然といえば当然の動きといえます。でも昨年だったら、もっと上下に激しく動いていたでしょう。
この動きは、日本だけかと思ったら、アメリカでも同じようです。最高値を取っている割には出来高が伴わず、値幅も限られています。解説者も、「出来高が少ない分、大量の売りが出ないため、相場が崩れません。このまま上昇を続けるものと思われます…」と。いままで「出来高が伴わないから新値は無理」といっていたコメンテーターの苦しい解説です。
波(投資環境)が変わったのです。当然、日中の値幅が少なければ、デイトレの値幅も少なくなります。1週間買い持ちしていた人のほうが、はるかに儲かっています。株価は絶えず変動し、その動きは、1日、1週間、1年の波になります。階段状に変化する波は、デイトレには不向き、長期保有者には有利になります。
昨年の波は、1日の変動が大きく、短期の値幅取りを繰り返すことで、長期保有者よりも儲かったかもしれません。このような動きは、ボラティリティの高い相場、価格差の激しい相場をいいますが、現在は逆。
それでは、なぜ世界的にボラティリティが低下しているのでしょうか。
考えられるのは、「ただひとつ」……、
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「プログラム売買」です。機械が人間に代わって売買をしているからです。
プログラム売買は、ファンドに取り入れられ、人間が売買するよりもいい結果がえられているようです。もちろん、ファンドは公表しません。公表できないことはたくさんあります。
機械が取引をする比率が上がれば、無駄な売買は必要なくなり、結果的には株価は、ファンダメンタル(バリュエーション)に収斂します。最終的には一物一価、1時間に1回の取引で十分です。「寄り付き」と「引け」だけでいいかもしれません。
必要な株数だけ売り買いすればいいのですから、売買高は減少し、値動きも少なくなります。資金も情報も少ない個人投資家は、一物一価の周りをうろつくだけで、相場を動かす力はありません。
株価は、ファンダメンタルとフェアバリューによって決まりますので、企業決算の発表がある1、4、7、10月に大きく変動しますが、それ以外の時期は、はほとんど動かない相場になってしまいます。
もともと、証券取引所は企業の価値を売買するところから始まっています。基本は企業業績、企業価値の金銭による交換なのです。その集合したものが、指数であり、相場なのです。経済情勢、政治情勢、地政学リスク、為替などは、企業業績に影響を与える要素として相場に反映されますが、株価を変動させるために、証券会社が利用している面が強いのではと思っています。
指数や先物取引は、市場の安定化に役立つとされていますが、今ではレバレッジを掛け、売買を活気付けて、価格の変動幅を上げるために使われるだけで、長期投資の個人投資家には無用の長物です。
長期投資の個人投資家と証券会社は、もともと同床異夢なのです。証券会社や取引所は、なんとか市場の活性化を図るように、ボラを高めるように努力するでしょうが、最近の波は、人間の知恵を無視し、機械化を進めてきたツケが出てきたといえます。
個人投資家は、短期の売買から、投資した企業とともに資産形成をしてゆく、本来の投資行動に切り替えればいいだけです。難しいチャートの勉強や、株価の変動に一喜一憂しなくてもすみます。どうしても株価のスリルを味わいたければ、いずれは解禁となるカジノでゲームを楽しむという手もあります。
このような投資環境がいつまで続くかは分かりません。ただ、波を読まないと、銘柄の選定も、買う時期も間違えてしまいます。
「どうですか。いま乗っている波は、どんな波か、考えてみませんか?」
「そんなこと考える暇があったら、デイトレするわ……」
「……」