中国の兵法書「孫子」の成立は春秋時代(紀元前400年頃)です。それ以前の戦(いくさ)は、力で押して後は天運に左右されるという考え方が主流で、運任せであったわけですが、この書の登場によって大局的な戦略と各局面での戦術の重要性が認識されるようになりました。
「孫子」は戦い方・勝ち方を表した書ではありますが、その冒頭では安易に戦端を開くことを諌めており、それが「孫子」の底流にある思想となっています。それでも開戦するに及ばざるをえない場合、戦のやり方をつまびらかにしたのが「孫子」です。
ところで、古代ギリシャにはピュロスという好戦家の王がいました。カルタゴの将軍ハンニバルに「アレクサンドロス大王に次いで偉大な指揮官」と称えられた人物でもあります。
ピュロス王は戦いには滅法強く、ローマを破るなど幾多の戦争で勝利を収めるのですが、ただそれだけで何を得たわけでもなかったといいます。
この故事から「労力や心労のわりに、得るものが少ない勝利」のことを「ピュロスの勝利」といいます。
株式投資におきましても、参戦しよく勝つには勝算と戦術・戦略が必要です。戦略や戦術を持たずに安易に参戦して後は運任せになっていたりしないか、あるいは「ピュロスの勝利」を繰り返してはいないか、振り返ってみることも大切です。