電力小売りの全国展開を計画している東京電力は二十二日、開始時期を十月とすることを明らかにした。関東に本社があり、全国各地に工場や店舗を持つ企業などと一括契約を結び、地元の大手電力より安い価格で電力を販売する。当初は関西と中部を中心に契約獲得を目指す。東電の「越境」は初めて。
東電の供給エリアである国内最大市場の首都圏では競争が始まっており、東電も域外進出で応戦する。企業集積度の高い三大都市圏が本格的な電力競争に突入する。
二〇一六年をめどに家庭向けまで含め電力小売りが全面自由化されるのをにらみ、既に自由化されている大口部門で先行して域外販売をスタートさせ、事業基盤を拡大する。
実際に事業を受け持つのは東電の子会社「テプコカスタマーサービス」で、二十二日に国に特定規模電気事業者(新電力)の届け出を行った。一五年に関西や中部に営業拠点を置く方針。東電は「家電量販店や多店舗展開している企業などに販売したい」としている。
同社は進出先の地域の大手電力から余った電力を購入したり、卸電力取引所を活用したりして、電力を確保する。地域の電力会社と組み、火力発電所を建設することも検討する。
東電は新しい総合特別事業計画(再建計画)で、十年後に域外で原発一基分に当たる百万キロワット以上の電力を販売する方針を表明、千七百億円の売り上げ目標を掲げており、まずは一六年度に三百四十億円を目指す。
小売り全面自由化を控え、電力業界では域外進出の動きが活発化している。首都圏では中部電力が三菱商事系の新電力、ダイヤモンドパワーを買収して電力小売りに乗り出したほか、関西電力も子会社を通じて事業を始めた。
<電力小売りの自由化> 大手電力会社の地域独占をやめ、新規企業の参入を促して電力を自由に販売できるようにする取り組み。大口の企業向けは既に自由化されている。政府は2016年をめどに、市場規模が約7・5兆円に上る家庭向けも加え、電力小売りを全面自由化する方針。電力会社間の競争が激しくなり、電気料金の抑制や、料金メニューの多様化が期待される。