やっぱりこの人は凄いと思う。何がすごいといっても、その苦労である。トヨタです。戦後のトヨタ自動車を造りあげた人です。そして工場建設で、売上が失敗すれば倒産という、もうこれは賭けですね。それをやって、今の世界のトヨタになった。日経新聞連載の「私の履歴書」が4月30日で、29回で終わった。新書の宣伝でいろいろあるが、経営とか人生とかを考えるのに、実際の話は面白い。この履歴書は勉強になった。
昭和40年代に、アメリカに輸出したトヨタ車が、その性能の悪さで、道路のあちこちにダウンして止まっているという話は、わたしが若い時に、日本の車はアメリカじゃダメだよと、口コミで聞いていた。その時の社長さんだ。
連載を見ていて、そうだったんかと思わされた。その後、エンジンの馬力を上げたり、マスキー法(排気ガスの、有害物を除去する法律)をクリアーする努力などは面白く読んだ。(このマスキー法をクリアーした車にホンダ車もある。)
29回の最後で、ああこれかと思った。これが自分に身についていたら、私の人生は変わっていたかもしれないと思った。これを若い時に見ておけば、人生が変わっていた。それを紹介します。
私の履歴書 豊田章一郎 29回より 一部抜粋
安岡正篤(やすおかまさひろ)先生直筆、中国清時代の政治家・會國藩の「四耐四不」を毎日眺めている。
「冷に耐え、苦に耐え、煩に耐え、閑に耐え、激せず、躁(さわ)がず、競わず、随(したが)わず、もって大事をなすべし」。「冷」は孤独。経営者は常に孤独に勝って自分の責任で決行する。「苦と煩」。経営は苦しみと煩わしさの連続。「閑」は閑職。「激せず」は腹を立てるな。「躁がず」は調子にのるな。「競わず」はけんかするな。「随(したが)わず」は何でも言いなりになるな。
(中略)
私は恩師の棚沢泰先生から「社会を発展させるには一歩一歩技術を積み重ねていくことが大切なのだ。理科の教科書のただ一行だけでも、一生のうちに付け加えられたらいいではないか。そうした真摯な努力を重ねていくのが人間というものだ」と言われた。 以上です。
ここのところは、何度読んでも、素晴らしい文だと思う。