兵庫県警が約二年前に行方不明者届を受理した男性(74)について、その三日後に保護した大阪府警から照会があったにもかかわらず、見落としていたことが二十八日分かった。
県警によると、男性は、同県尼崎市に住んでいた二〇一二年三月八日、帰宅途中に行方が分からなくなり、妻が市内の警察署に届けた。直近のものがないため、二十~三十年前の写真を添付した。
大阪府警が三日後に隣接する大阪市内で男性を保護。重い認知症で名前や住所を話せず、身元確認ができなかったため、顔写真や着衣を基に全国の警察に照会した。
これを受けて県警は、県内四十八署の行方不明者届と照らし合わせたが、発見できなかった。年間で五千件以上の届け出があり、見落としていたという。
男性の成年後見人の司法書士によると、男性は保護された後、大阪市内の介護施設で生活し、「太郎」と仮の名前を付けて呼ばれていた。今年四月中旬、男性が身元不明のまま施設で暮らしているとの報道があり、知人から連絡を受けた家族が二十七日に男性と対面。男性は発熱のため寝ていたが「お父ちゃん、間違いないね」と涙声で呼びかけたという。
兵庫県警の福本明彦生活安全企画課長は「二年もの間、家族のもとにお戻しできなかったことは残念。行方不明者の照会作業の徹底に努める」と話した。