[スプートニク]
1957年10月4日、ソヴィエト連邦はカザフ共和国にあるバイコヌール宇宙基地から世界初の人工衛星スプートニクを打ち上げた。直径58センチ、重さ83.6kg、地球を96分12秒で一周した。
翌月3月にはライカ犬を載せたスプートニク2号の打ち上げにも成功。宇宙空間に出た最初の動物となるが、衛星は回収されず、宇宙における生物研究の犠牲となった。
(「クロニック世界全史」講談社より)
**********************************************
★「スプートニクの恋人」
村上春樹著 講談社文庫 2001.4.15.第一刷 2013.4.15.第45刷 P.5より抜粋
ライカ犬の最期の瞬間を、想像してしまう。
エサがとうとう無くなっていって、何が起きているのかわからなかったであろう犬の想い。
そこから色々な想像が湧きおこってきて、やりきれない気持ちになる。
すべて描写しなくても、こういう想像を読者に抱かせる効果。
読んではいないのだけど、
深沢七郎の「楢山節考」にも一貫してそういうイメージが付きまとうはずで、
読者はその部分に否応なく惹かれてしまうのではなかろうか。
22歳のすみれは、激しい初恋に落ちる。
相手の名前は「ミュウ」といった。
でもミュウには夫がいてかなり年上で、しかもすみれと同性だった。
「こっちの世界」と「あっちの世界」を行きつ戻りつする春樹ワールド。
魅力的な文体と、色とりどりに散りばめられた小ネタにも魅了されながら、
あっという間に読了した。
すみれには、少しばかり「笠原メイ」を思わせるところもあって惹かれた。
読後感は、かなり良い。
**********************************************
ぼくはベッドを出る。日焼けした古いカーテンを引き、窓を開ける。
そして首を突き出してまだ暗い空を見上げる。
そこには間違いなく黴びたような色あいの半月が浮かんでいる。
これでいい。ぼくらは同じ世界の同じ月を見ている。
ぼくらはたしかにひとつの線で現実につながっている。
ぼくはそれを静かにたぐり寄せていけばいいのだ。
**********************************************
★同上 P.318より抜粋
すみれとぼくとの関係を語っているのだけれど、
村上春樹と読者との関係をも想起させるようなカラクリも、ここにはあると思われる。
それによって、読者は春樹ワールドから、未来永劫、二度と離れることができなくなるのだ。
これは川上弘美の「離さない」という短編にもみられるカラクリだと思われる。
オイラの場合には、さらに特殊で。
オイラの投稿した「期限切れ」でのペンネームだけど。
それは何年も前に、朝起きたら頭に浮かんだものだった。
メモに残さなくても忘れることはないだろうと思われるほど、
オイラにはしっくりとした名前だった。
下の名前を、「ミュウ」という。
不思議であると同時に、もういい加減に怖いという想いが募っている。
さらにまた、「大物右翼」が登場するという物語の存在を、
河合俊雄の書籍から知った。
それも、読まずにはいられない。
「キヤ」という名前は、きっと京都の木屋町から来ていると教えてくれたのは、
同級生で居酒屋「漁り火」の店主をしているKだった。
「キヤ」という店は10年ほど前まで、藤沢に実在していた小料理屋だった。
オイラはそこで、児玉系右翼の金庫番だったという初老の男性Yに出会った。