(略)
── 頭で五十枚ってわかってても、加減がわからないんですよね。
Mr.K 加減がわかろうがわかるまいが五十枚。俺なんか最後の五十枚目の原稿用紙の最後の升に「。」
書いて、そこから書き始めたりしたもんだよ(笑)。ここより先は書けないんだから、一言も無
駄にすまいとね。でもそうやって文章を書いていくのは鍛錬ですよ。あなた方がこれから文章を
書くのかどうかは知らないけれど、そういう目で見ていくと、刈り込みができてる小説とそうじ
ゃない小説と見分けがついてくるから・・・・・・文学部じゃないんだよな?
── 文芸学科ですから、小説家を目指してる人が多いですね。
Mr.K それはがんばってくださいね。小説家なんてなるの簡単ですから。今新人賞なんていっぱいある
から。それとっちゃえば作家ですよ。でも、作家であり続ける、書き続けるってのは半端な努力
じゃ無理ですよ。まぁ、がんばってください。
**********************************************
Mr.Kは、学生の頃になにげなく書いた作品の受けがよく、デビューしたものの、その後不調に。
それから書いてはボツ、書いてはボツを繰り返し、ボツ原稿は己の身長を超えたという。
驚いたことに、あの浅田次郎も最初はボツ原稿の山を築いたのだという。
(でも、何十年も経ってその作品をリメイクして恨みを晴らしたそうだ)
「文芸と言わず芸術というのはね、やはり遊びですよ。死を賭けた遊びと言ってもよい」
古川薫というベテラン作家の言葉も、心に響くものがある。
この書籍に出てくる作家はだれも魅力的で、知ってしまうとその作品に触れたくなってくる。
そういう文藝春秋の、これは戦略なのかも知れないなどと思いつつも、
この書籍はどうにもオモロイのであった。
★「作家の決断 ~人生を見極めた19人の証言~」
阿刀田高編 文春新書 850円+税 2014.3.20.第一刷発行
「ちゃんと生きればちゃんと死ねる」北方謙三 P.279~280より抜粋
赤川次郎・浅田次郎・阿刀田高・大沢在昌・北方謙三・小池真理子・佐木隆三・瀬戸内寂聴
高樹のぶ子・田辺聖子・筒井康隆・津本陽・夏樹静子・西木正明・藤田宣永・古川薫・森村誠一
吉岡忍・渡辺淳一
今度スペイン酒場で、Mr.Kと同郷だというカッパ先生に会ったら、
この話を肴に、飲もう。
Mr.Kの書く「三国志」が、実は日本の皇国史観を反映したものだとは知らなかったな。
(「殺すぞ!」などと、電話が来たこともあるという逸話が・・・)
「死を賭けた遊び」たしかにこれに熱中すれば、ちゃんと死ねそうだ。
相場みたいでちょいと、シビれるんだけど。。