需給相場の行き着く先は-その2

yuhsanさん
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もう一度、「株価は何で動くのか」を考えて見ましょう。株価は「短期では需給で決まり、長期ではファンダで動く」でした。


解決策としては、「短期の需給改善を図り、多くの市場参加者で動く投資環境を作る」ことです。


目下の需給では、信用取組や先物売買といった面からではなく、外国人の大量売りに対して、日本人による現物の買いが少ないことです。


昨年、日本市場で16兆円も買い越した外国人は、アメリカの金融緩和縮小から、今年は海外市場からの資金引き上げを図っています。ヨーロッパも同じ道を歩んでいます。引き上げた資金は、本国の株式市場に流れ込み株価を上げ、ますます資金回帰が加速されています。


日本市場からの資金流出は当面避けられないのです。この流れを止めて、需給を改善するには、日銀しかありません。


リーマンショックのさい、100年に一度といわれた大恐慌をわずか4年で立て直したのは、バーナンキFRB議長の住宅担保債権の買い上げでした。当時の住宅担保債権は、サブプライムローンの焦げ付きで、紙くずになる可能性のあるほどのリスクの高い債券でした。それを国の資金で買い上げ、金融市場を安定化させ、後に国に莫大な利益を還元させたのです。


日銀のETF保有残高目標は、昨年末で2.5兆円、14年末で3.5兆円となっており、このところ連日で購入しています。昨年まであった前場1%ルールはなくなり、今年に入ってからは、前場安の時にほとんど購入しています。昨日までに、2,924億円購入していますが、1兆円の枠に縛られているせいか、購入金額は減少気味です。早急に購入枠を増やし、購入方法も変える必要があります。


日銀のETF購入残高は、株式市場全体からすれば微々たるものですが、ETF残高では4割に達し、外国人投資家と同じように、指数偏重相場の一因にもなっています。このまま続ければ、ユニクロや、ファナックの相場を支えるだけで、市場機能の回復にはなりません。買い上げ銘柄をTOPIXのコア銘柄に変えるとか、かっての証券危機の際にやった株式買上機構のようなものを作り、個別銘柄の買い上げを可能にする必要があります。


さらに、高配当の優良企業に無利子の資金を貸し付け、自社株買いを促進するとか、買いあげたETFを年金基金に簿価で譲るとか、それこそ「異次元」の株価対策を講じて、外国人売りを吸収しなくてはなりません。緊急対策が必要なのです。


外国人売りを国の資金で救済することについては、市場機能を壊すとか、モラルハザードを引き起こすとか、税金の無駄使いをいう学者やマスコミもあります。アメリカでも、リーマンショックのとき、同じようなことが言われました。株価を維持し、個人の購買力を高めることは、経済の維持向上に不可欠なのです。国の資金をこういうことに使えば、後で大きな収益を生んで国民に利益を還元できるのです。


日銀による需給の改善を講じている間に、個人の金融資産を呼び込む対策が取られなくてはなりません。


個人の金融資産は、1,500兆円といわれていますが、そのうち投資信託を含めた株式投資は8%、55%が現預金です。先進5カ国に比べても、現預金比率が極端に高いのが特長です。理由はデフレで、現預金が一番有利な資産保全手段だったからです。


日本もいよいよインフレ時代に突入し、今年はその序章です。個人の金融資産を株式市場に呼び込み、介在を活性化させる背景は整ってきています。国の政策が、個人の株式投資にもっと優しくなれば、個人の現預金の1%が株式に向かうだけで、外国人売りを吸収できます。


まず、NISAを個人投資家が使いよくする税制に変えることです。証券税を10%に戻すのは無理としても、小額投資者の税負担をなくす趣旨なら、枠を外して100万円までの売買益も配当も、すべて無税にするよう改めるべきです。こうすれば、税務署と証券会社にだけ都合にいい制度ではなく、個人投資家にとっても使い勝手のよいものになります。


次に、長期で株を持てば報われるような経済社会の構造を作るべきです。たとえば配当金については、3年以上の保有者に割増金をつけるとか、長期売買に対する売買課税を減額するといった制度を一般化し、株式保有者の社会に対する貢献度を、社会全体で共有することが必要です。


増配や自社株買いなどを増やし、個人投資家に経済発展の利益が行き渡るようになれば、投資に対する意欲も湧いてきます。個人投資家が数多く市場に参加するようになれば、それだけ株価に厚みができ、市場機能が回復してきます。個人投資家を大事にすれば、社会全体が豊かになり、将来に対する希望も生まれます。


市場ではアベノミクスの「第三の矢」が、株価を上げるという人もいます。「第三の矢」は、外国人を引き戻し、ユニクロの株価を上げる効果はあるかもしれませんが、マイナスの部分もあり、やってみなければ分からないところもあります。法人税を引き下げるくらいなら、証券税制の見直しのほうが、はるかに株価に効果的です。


外国人売りが一巡し、指数売買が収まるようになれば(時期は不明ですが)、市場はファンダメンタルを見るようになります。日本経済は、株価の下落とは裏腹に、順調な回復をみせています。3月末時点でのETFは1,000円を越え、現在のPERは、14倍を割るところまできています。一刻でも早い市場の機能回復を願っています。


株価が、このままずるずると下げ、今年の安値14,000円を割り込むようになると、安倍内閣の支持率が、急落することも予想されます。株価と内閣支持率との相関は、以前からいわれていましたが、株価が支持率を支えてきたのです。前回の安倍内閣が、株価の下落で支持率を下げ、それが交代に繋がったことは、安倍さん自身がご存知のはずです。


株価が下がれば、経済にも影響が出ます。株価下落が内閣支持率にどのように影響するのか、注意深く見守る必要がありそうです。



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