元祖SHINSHINさんのブログ
「Blue moon」・・・川上弘美の遺言?
それは、私小説かと思われるような語り口で始まる作品だった。
でも、この4ヶ月のあいだ、文藝春秋に掲載されていた村上春樹の短編のように、
実は思わせぶりな創作なのかも知れない。
そんな用心も忘れなかった。
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(略)悪性腫瘍だった場合、どのくらい生きられますか?五年生存率は、約十パーセントです。
来週から仕事でロシアに行くことになっているんですけれど、どうしたらいいでしょう。行って、大丈夫です。ただし帰ったらすぐに入院して下さい、手術を行います。何か気をつけることはありますか、食べてはいけないものとか、飲んではいけないものとか、してはいけないこととか。何もありません、いつもの生活で大丈夫です。
大丈夫なのだ。十パーセントの確率のもとに。良性の腫瘍である確率も、悪性腫瘍だった場合の五年生存率も、供に十パーセント。きれいな数字だ。ロシアは寒いだろうか。暖かい帽子を買わなければ。
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数々の作品に掲載されている川上弘美の顔写真、
若くって綺麗だったころのものを、ん十年も使い回しているのは誰の目にも明らかだ。
そうとわかっていても、『離さない』とか読んじゃうと心底ドキッとしちゃうんだから、
もうこれはしょーがない。
これも、弘美マジックなんだ。
それがいつだったか、激太りしている写真をオイラは目にした。
それを見て、やわらホッとしたのを覚えている。
「ほーれ見ろ、彼女もやっぱり普通の人間なのだ」
がその後、芥川賞選考で見た写真では、驚くほど激やせしているのだった。
なかなか見事なダイエットじゃないかと、感心していたのだけど。
それが魔坂、病気のせいだったとは・・・。
構えていたオイラの用心は、もろくも崩壊するのだった。
いや、ちょっと待て。
筒井康隆の書いたように、
これがエンタメ小説だったら、主人公が死ぬわけはないのだ。
いや、ちょっと待て。
けれど川上弘美が書くのは、いつだって純文学じゃないか。。
とすると・・・。
いったい、この短編はどういう落ちになるんだろう?
★「GRANTA Japan with 早稲田文学 01」
早稲田文学会 早川書房 1,800円+税
2014.2.20.初版第1刷印刷 2014.3.10.初版第1刷発行
「Blue moon」川上弘美 P.110より抜粋
★「神様」
川上弘美著 中公文庫 457円+税 2010.5.30.17刷発行
「離さない」P.149~172
PS:川上弘美の作品で、特に「センセイの鞄」と「離さない」を読んだら最後、
ホントウに弘美に取り憑かれてしまうので、ご注意を。
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