効率的市場仮説とは、情報はそれが生産されると直ちに、しかも100%株価に反映される結果、誰しも継続して他人より優れた投資結果をあげることができないと言うものである。
効率的市場仮説に基づく基本的な考え方を数式にすると、投資した価格(D)とその価値(V)は常に等しくなると言うものである。その公式はD=VもしくはD≒Vとなる。しかし、実際には受け取った情報の解釈や投資家のセンチメントが少し変わっただけでも株価は大幅に変動する。しかし、効率的市場仮説では、同じ情報に対し、投資家達が全く同じように合理的行動で反応するため、株価は基本的な価値に等しくなると主張する。効率的市場仮説に対する反証の1つとして、アノマリー説などがよく取り上げられるが、それよりも効率的市場仮説の問題点は、投資家の入手する情報の格差は無視され、投資決定の際にすべての人が同じ情報解釈能力を持ち、かつ合理的に行動するという前提までついていることである。この前提が一つでも崩れれば、効率的市場仮説の信頼性は大幅に低下する。このサイトでも人間が常に合理的行動をとらないのは繰り返し述べてきたことである。
効率的市場仮説は、パッシブ運用をする機関投資家などが価格(D)と現在の価値(V)を等しいと信じたい為の時代遅れの理論とも言える。
実際には、ある銘柄の価格(D)は、現在の価値(V)、情報の解釈(I)、投資家の心理状態(P)の関数と考えるのが現実的である。
通常は価値(V)と情報(I)が、投資家の心理状態(P)より優先するが、熱狂的に上昇している時やパニック的に暴落している時は、P(投資家の心理状態)が、I(情報の解釈)や価値(V)などより重要な価格決定要因となる。また、P(投資家の心理状態)が、I(情報の解釈)に大きな影響を与えるなど、PとIは互いに影響し合う不安定なものとなる。つまり心理状態で情報解釈はゆがめられ、株価は現実の価値から大きく乖離してしまうのである。企業が存続し続ける前提のもと、長期の時間軸で考えれば企業の価値(V)が株価(D)を決定することに異論はないが、投資家が状況とともに絶えず変化する価値(V)を正確に測定することはできないのである。