サントリーホールディングス(HD)が、バーボンウイスキーのジムビームなどで知られる米酒造大手ビーム社を約1兆6500億円で買収する。円安という不利な条件もある中で、なぜ巨額投資に踏み切ったのだろうか。
Q サントリーにとって買収のメリットは。
A 約一兆六千五百億円という投資額は、酒類や缶コーヒー、お茶などを合わせたサントリーグループ全体の年間売上高に迫る額だ。だが、少子高齢化で国内酒類市場の縮小が避けられない中、日本に閉じこもっていては成長は見込めない。一方でウイスキーなどの蒸留酒の世界市場は拡大傾向にある。ビーム社が持つ米国や欧州、ブラジルなどの海外販売網を活用すれば、サントリーのウイスキー販売も増やせる。
Q 巨額の買収をして経営に影響はないのか。
A サントリーは借金や社債よりも、手元にある現金などが多い「実質無借金」の健全経営の企業だ。現金預金額は昨年九月末で六千四百億円に上り、巨費に耐えるだけの経営体力があると判断したようだ。投資額は、手元の資金に加え三菱東京UFJ銀行からの借り入れで賄う。
Q 円安傾向で、海外企業の買収は不利になるのでは。
A 確かに円安が進めば、日本円に換算した際の投資金額が膨らむ。例えば、今回の買収金額は約一兆六千五百億円だが、仮に一ドル=九〇円だったら一兆四千億円余りに抑えることができた。実際、野村証券によると、急速に円安が進んだ一三年は、日本企業による海外企業の合併・買収が前年と比べて件数で二割、投資金額で四割減少した。
Q 今後、企業買収はどうなっていくのか。
A 円安は逆風だが、日米ではお金を大量に市場に供給する大規模な金融緩和が続いているので、低い金利でお金を借りやすい。さらに国内の景気は上向きつつあるから、経営危機に備えて手厚く現金を持ち続ける必要性が薄まっている。今後は「海外の成長を取り込むチャンス」と投資に踏み切る企業が増えそうだ。