新興国の景気は2011年を頂点にピークアウトしていた様ですが
米国の景気が上向き、先進国の株価が一人歩きを始めたこともあり
結果論ですが、QE3の縮小による影響が軽視されていたのではないかと思います。
恐らく先進国の景気が回復すれば
それに連れて新興国の景気も再び浮上するだろうと楽観視されていたのではないでしょうか。
しかし、いざ蓋を開けてみると新興国の景気減速が先進国の足を引っ張りかねないという
楽観論とは程遠い事態に発展しつつあります。
それが最近の世界的な株価下落に繋がっている訳ですが、事態は思ったより深刻かも知れません。
以下に今日のロイターニュースからポイントを抜粋してみます。
(主な新興国:インド・インドネシア・ブラジル・南アフリカ・トルコなど)
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近年FRBが供給した膨大な緩和マネーで溢れ返ってきた新興国市場は
FRBの緩和縮小とともに資金が逆流し、アルゼンチンやトルコなど経済や政治の面で一番厄介な問題を抱える国の通貨が急落している。
多くの新興国はかつてより柔軟な為替制度を整備し、巨額の外貨準備を保有するようになったとはいえ、投資家の態度は以前の危機の際と大差はないと思われる。
ではなぜ新興国市場が1990年代に悩まされた資金逃避に再び見舞われかねないのか。
その主な理由は3つある。
第一点として、過去10年間で新興国に流れ込んだ資金規模の大きさが挙げられる。
それは15年前のパニックで逃げ出した資金量などとは比べものにならない。
第二点は、新興国の資金調達が昔の主流だった銀行からの直接借り入れよりも債券発行を通じた形が増えていることだ。借り入れなら銀行と調達先の国や企業は長期的関係が伴う。
第三点は、上場投資信託(ETF)の登場。これによって過去10年で新興国への無差別な資金流入という側面が強まったのは明白で、逆に一斉に逃げ出す事態に陥りやすくなっている。
ゴールドマン・サックスのブランクファイン最高経営責任者は、新興国経済の改革や格付け引き上げ、健全な財政やしっかりしたインフラという個々の要素があったとしても
投資家は依然として売りの局面では新興国を一体として扱う傾向があるとの見方を示した。
ブランクファイン氏の見方によると、投資家が新興国市場に参入する際には個別案件ごとに念入りに検討するが、急に撤退する場合は選別色が弱まる。「新興国市場は地合いが良いときはネームごとに取引されるクレジット物に似ており、地合いが悪化すればネームは忘れられてマクロイベント化し、すべて新興国市場として同一視される」と語った。
<ETFや債券発行が資金流出助長>
IIFによると、2005年以降の直接投資やM&A、証券投資などを合わせた新興国への資金流入額は約7兆ドルだった。
JPモルガンの推計では、新興国市場の債券残高は現在10兆ドルと1993年の4220億ドルから急増。
新興国債券インデックスを運用の指針とする資産の総額は6030億ドルで、2007年の2倍を超える。
またMSCIの主要新興国株指数を指針とする資産は1兆3000億ドルに上るという。
リッパーのデータでは、過去10年間に新興国の債券と株式市場に流れ込んだ金額はネットベースで4120億ドルに達する。
重要なのはこの間、資金フローに大幅な変調が見られなかったことで
資金流出超となったのは昨年と世界的な金融危機が起きた2008年だけだったという。
その結果リターンが一定水準を下回ると、ファンドからの資金流出が膨らむ素地が整ったとみられる。
1つもしくは2つの市場で損失を被れば、運用担当者は他の市場の持ち高を解消してファンドの純資産価値を守らざるを得ない。
EPFRグローバルが調査対象とする新興国株のETFの資産額は約3000億ドルと
08年以降で3倍に膨らんだ。04年当時はほぼゼロだった。
ETFはミューチュアル・ファンド(米国の一般的な投資信託)とは異なり
日中も価格が更新されるため相場の乱高下をさらに激しくしている。
先週新興国株から流出した25億ドルの約半分がETFの資金だった。EPFRによると
年初来で見ても新興国株からの純資金流出総額57億ドルの4分の3に相当する41.2億ドルがETFだ。
ドゥ・ヴェールの投資ストラテジスト、トム・エリオット氏は「ETFは新興国市場が活況な局面で足の速い資金の流入を助長したように、今はそれらが去るのを助長している」と話した。
もう1つの新興国資産売りの連鎖を招く経路として近年広がってきたのが、新興国企業の起債だ。
社債の売り出しは10年以降、企業がシンジケートローン市場から起債へと調達の軸足を移すとともに急増した。銀行は日々の流動性制約に直面しないのに対して、ファンドは毎日の解約に対応が必要になる。つまりファンドは大規模な債券投資を突然手じまうかもしれず、市場が強烈な調整に見舞われるリスクが高まっている。
<選別の余裕なし>
一部の新興国市場は最終的には恩恵を受ける可能性があるものの、暫くそうした事態は起きない
というのが投資家の声だ。
株式から通貨まで資産価格は割安に見え始めており、多くの国の経済は基本的に健全だが、今押し目買いに走るのは極めて危険といえる。
各国の政策担当者は自国の強みを声高に主張し、メキシコやコロンビアの財務相は投資家には新興国市場の「玉石」を判別する能力があると自信を見せた。
しかし投資家がそうした動きをするまでには時間がかかるだろう。
ソシエテ・ジェネラルの新興国戦略責任者、ブノワ・アン氏は「われわれは全面的な金融コンテージョン(危機の伝染)の流れに置かれている。今目にしているような深刻な危機において、投資の選別に多くの時間を費やす意味はない」と述べた上で、「現在はすべてを売れ」ということだと付け加えた。
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選別の余裕なしとはいささかショッキングな言い回しですが
新興国に限らず世界中にばら撒かれているお金がある程度リセットされることになれば
世界の金融市場は例え短期間であっても大きく揺れ動き、まるで脳挫傷の様な状態になりかねません。
また日本の株式市場には昨年15兆円に上るマネーが流入しているため
日本株への影響は世界の主要市場に比べ一段と大きくなることも考えられます。
ただ周囲が「買いだ!買いだ!」と煩い時が売り時なら
逆に「売りだ!」は買い場なのかも知れませんが
個人的にはFOMCの結果にNY市場がどう反応するかを見極めてから今後の方針を考えようと思います。
それに「屁痔ファンド」の動きも気になりますし・・・
取り敢えず今は「寝た振り」が正解ではないかと思います。(-.-)Zzz