それがまた予想を難しくしている。
個人的には「今回はQE3縮小を見送るべき」だと思っている。
見送るだろうという予想ではないので、ご注意を。
▼27日午前の東京株式市場で日経平均株価は大幅続落し、前週末比382円安の1万5009円で引けた。新興国経済の先行き懸念などを背景に、前週末の欧米市場の株安や円高・ドル安で、投資家が運用リスクを避ける動きが強まった。昨年末まで上昇ムードが高まっていた株式市場が「変調」をきたすなか、日米の中央銀行の手腕に期待が高まっている。市場の注目は、まずは28~29日に開催される米連邦公開市場委員会(FOMC)に集まりそうだ。
前場の東京市場は、機関投資家や短期的な利益を狙う投資家などから幅広い銘柄に売りが出て、ほぼ全面安の展開。9時10分すぎには日経平均の下げ幅が450円超に広がる場面もあった。東証1部で株価が上昇した銘柄はわずか32。値下がり銘柄は全体の97%超に達した。
株価急落の主因は新興国経済の先行き懸念だが、株式市場では「日銀の黒田東彦総裁の22日の記者会見も株高ムードに冷水を浴びせた」との見方もある。黒田総裁は会見で「市場は市場。リスクが顕在化しなければ、現在の政策が続いていく」などと発言。早期の追加緩和に慎重な姿勢をみせたためだ。
黒田総裁にしてみれば、期待が高まりすぎている市場をいったん落ちつかせることで、将来に実施する追加緩和の効果を強めることが狙いだったのかもしれない。だが一部の市場関係者からは「新興国不安が強まるなかだっただけにタイミングが悪かった。黒田発言は円高・株安を後押しする格好になった」との恨み節が聞こえてくる。
そこで市場の注目の的になっているのが米国の中央銀行の動き。市場では、米連邦準備理事会(FRB)がFOMCで、予定通りに資産購入額を100億ドル減額すると予想する向きが多い。
大和証券の成瀬順也チーフストラテジストは「アルゼンチンの通貨急落などは外貨準備の不足が海外ヘッジファンドに狙われたもので、米金融政策とはほとんど関係ない」と指摘。むしろ「新興国景気を考慮して量的緩和の縮小を中断すれば、米金融政策への信頼が揺らぎ、海外ファンドなどの格好の売り材料になる可能性がある」とみる。
一方で「FRBが縮小を続ければ、新興国からの資金流出が加速し、円高・株安が止まらなくなる」との懸念も根強い。日本の市場関係者には、米量的緩和の縮小観測と新興国経済への懸念から日経平均が1100円超も下落した昨年5月23日のトラウマが今も残る。
シカゴ国際金融取引所(IMM)の円・ドル先物の建玉をみると、円売りを示す円ショートの建玉は昨年末に、07年以来の高水準に膨張。今も高水準を維持している。FOMCなどをきっかけに、短期的な利益を狙う投資家が円買いを仕掛ければ、円相場が想定以上に上昇し、株価が急落するリスクは残る。
いちよしアセットマネジメントの秋野充成執行役員は「FRBは量的緩和の縮小を予定通り進めつつ、新興国経済も考慮に入れていることを市場に伝え、市場の不安を後退させる努力をすべきだ」と話す。バーナンキ議長からイエレン副議長へのバトンタッチを前に、年初の楽観ムードが一転した株式市場。日米の中央銀行が期待通り、市場との対話を深められるか、いつにも増して目が離せなくなりそうだ。
<日経電子版より>