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【書評】『ノボさん 小説 正岡子規と夏目漱石』伊集院静著

記事によると、正岡子規の職業を知っていますか。「いきなり何だ、俳人・歌人だろう」。はい、確かに教科書や辞書にはそういう肩書で載っています。しかし、近代短歌の完成に重要な役割を果たした評論『歌よみに与ふる書』を子規が新聞「日本」に連載し始めた当時、彼は歌人として特に著名だったわけではなかった。どちらかといえば、文芸新聞「小日本」を世に送り出した編集者として知られていた。「貫之は下手な歌よみ」といきなり断ずる挑発的な筆致は、「何にでも首を突っ込みたがる門外漢」を任じていたからこそ可能だったのだ。この『ノボさん』は、子規を主人公とした青春小説である。とぼけた松山弁でひょうひょうとした態度をみせながら、人の懐にいつの間にか入り込んでいる。挑発的な物言いをしてもなぜか人を怒らせない。こういう人だから『歌よみに与ふる書』を書けたのかなどと納得してしまう。そしてもう1人の主人公が、子規の東大予備門での同級生、夏目漱石である。この2人は、実に対照的だ。エリートを目指して地方から上京してきた子規と、東京生まれ東京育ちの漱石。『坊ちゃん』そのままの江戸っ子というイメージの強い漱石だが、この小説ではスマートで気取った都会っ子という描かれ方である。子規は結局帝大を中退。エリートの道を放棄し、東京に家族を呼び寄せて文学に熱中する。漱石は逆に学士様として松山や熊本に赴任。東京と地方の文化格差が、ここにおいて逆転する。もう一つ重要なモチーフが「べーすぼーる」、すなわち野球。子規が熱中していたアメリカの球技であり、そして著者の伊集院静自身もまた、立教大学野球部OB。地方から上京して野球と文学に熱中する子規の姿は、自己の投影なのだろう。野球を通じてアメリカの思想に触れた子規が、やがて「日本文化」の発掘に努めてゆく。東京と地方。アメリカと日本。憧れと愛憎。現代でもまだ終わってはいない「近代」の二極構造の、写し絵となっている小説なのであるとのことです。内容紹介「ノボさん、ノボさん」「なんぞなもし」明治二十年。新時代の躍動とともに、ノボさんこと正岡子規は二十歳を迎えた。アメリカ渡来のべーすぼーるに夢中の青年は、俳句・短歌・小説・随筆、あらゆる表現に魅入られ、やがて日本の文芸に多大な影響を及ぼす存在となる。子規は常に人々に囲まれていた。友人、師、家族から愛され、子規もまた彼らを慕った。そしてこの年、東京大学予備門で運命的な出会いを果たす。同じく日本の文学の礎となる、金之助こと夏目漱石である。志をともにする子規と漱石は、人生を語り、夢を語り、恋を語った。明治三十五年、子規の余命が尽きるまで、誰もが憧れた二人の交際は続く。子規と漱石の友情を軸に、夢の中を走り続けた人、ノボさんの人生を描く。小説家・伊集院静がデビュー前から温めていたのは、憧れの人、正岡子規の青春。野球と文芸に魅入られた若者の姿は、伊集院静の青春そのものだった。三十年にわたる作家生活の中で、ずっと憧れ、書きたかった。書かなければ、先には進めなかった。『いねむり先生』から二年半、誰もが待ち望んだ青春小説の誕生!ノボさん 小説 正岡子規と夏目漱石posted with amazlet at 14.01.26伊集院 静 講談社 売り上げランキング: 772Amazon.co.jpで詳細を見る【送料無料】ノボさん [ 伊集院静 ]価格:1,680円(税込、送料込)▶ 楽天ブックス 本TOP本、書籍の通販/新刊・予約・ランキング、注目・話題・人気の本▶ 楽天koboイーブックストア新着ピックアップ/新作追加!ebookセレクション!▶ 楽天ブックス DVD・ブルーレイTOP新作予約・人気のタイトルが満載/スペシャルセール開催中! Ads by SCL
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