kabukabumanさんのブログ
金融・不動産バブルで揺れる中国が抱える財政問題
中国の金融・不動産バブルについては再三議論されていますが
公的年金制度改革の実施過程で明らかになった「地方政府の隠れ債務」も大きな問題です。
そこで財務は健全とされている中国の台所事情について
今後益々重要となる年金問題と合わせて少し考えてみたいと思います。
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中国の総人口は2013年には13億6000万人に達し
1981年に10億人を突破して以来年々増加の一途を辿っています。
しかも一人っ子政策の副産物として少子高齢化が急速に進んだことから
年金制度の整備が急務とされていますが
ベルリンの壁崩壊後、共産党一党独裁を堅持しながらも経済には市場競争原理が導入されたため
それまで保証されていた一定の収入や生活の安定が剥奪された経緯があり
国民の政府に対する不信感は未だに根深く、年金制度を進める上で障害になっている様です。
ところで現在生産者人口は総人口の70%を占めていますが
2007年をピークに年々減少の一途を辿っており(2050年まで減少が続く)
20年後にはおよそ65%、30年後には60%まで減少すると言われています。
これに対して60歳以上の高齢者比率は2012年度が14.3%(約1億9400万人)で
昨年春に2億人を突破したとのこと。(65歳以上は9.4%、約1億2800万人=ほぼ日本の総人口)
因みに政府関係者の証言や日本貿易振興機構(ジェトロ)の調査によれば
2050年には総人口の三分の一に当たる4億5000万人が60歳以上になると試算されており
そのうち65歳以上が約3億4000万人、80歳以上は1億人を突破するそうです。
(2050年の日本の総人口予想は約1億人なので中国はやはり何でも規模がデカイですね)
そしてこの時の生産者人口はおよそ8億人と推定されており、日本より定年退職が早い中国では
およそ1.8人で1人の年金生活者を支えなくてはなりません。
しかも中国の年金積立額を対GDP比で見ると僅か2%で日本の十分の一にも及びません。
さらに公的年金制度改革の実施過程で地方政府が多額の隠れ債務を有していることが表面化し
中国全体が抱える債務の実態が予想以上に大きいことが解かって来ました。
これまで中国は外貨準備高も豊富で貯蓄率も高いことなどから
金融危機が起こっても乗り切る力は充分持っていると考えられていますが
中国特有の曖昧な経済指標にも似た不透明な財務管理がなされていたとすれば
「隠れ債務」の実態は想像を遥かに上回るかも知れません。
何れにしても中国発の金融危機は着実に近づいている様な気がします。
詳しい解説は以下に昨年の日経新聞から抜粋させて頂きます。
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中国政府が公表している国債などの債務残高は2012年末で約7兆7600億元(約122兆円)
(注)現在の為替レートではおよそ130兆円になります
GDP比に直すと約15%となる。
これなら中国が健全財政の目安とする「60%以下」を大幅に下回る水準だ。
問題は地方政府が抱える「隠れ借金」がどのくらいあるか。
中国では原則として地方債の発行は禁止されており、銀行からの融資も規制されている。
だが、地方政府は「融資平台(プラットフォーム)」といわれる投資会社を通じて資金を借り入れ
地域開発などインフラ投資を拡大している。
融資平台を「隠れ蓑」とする地方政府の事実上の債務は公表されている中国の債務残高に含まれない。
中国の審計署(会計検査院)は、こうした地方政府の「隠れ借金」が10年末で10兆7000億元に上るとはじいた。だが実態はこの数値を大幅に上回るとみられる。
中国西部の甘粛省蘭州市。大型の重機が700余りの山を切り崩し、整地が進んでいる。
220億元の開発資金のほとんどはいったん不動産開発業者が手当て。
地方政府は造成後に住宅などを売却して、その一部を開発業者に支払うという。
地方政府の債務がどんな形で計上されているのかは不透明だ。
中国の招商証券や華泰証券が推計している地方政府の「隠れ借金」は約15兆元。
項懐誠元財政相は「20兆元以上」という見通しを示す。
これを反映させると、中国の政府債務はGDP比で50~60%に跳ね上がる。
このほか、旧鉄道省の鉄道建設債務や年金債務などの公的な借り入れもある。
「広義の負債まで入れると政府債務は90%を超える」(華泰証券)
中国政府は現在、インフラ投資で景気をテコ入れしているが
金融危機後の財政出動が債務不安を招いた米欧に近い経路をたどる恐れがある。
丸紅経済研究所の鈴木貴元シニア・エコノミストは
「中国財政の健全性にすぐ問題が生じるとは思わないが、市場は将来的に中国が債務を管理できるかに疑念を抱き始めている」と指摘する。