首相、増税決断迫られる2014年 経済の行方を展望(3)

■実現できる?物価上昇ペースを超える賃上げ
 →「達成は難しい」

 政府は賃上げと物価上昇の両輪で日本を15年間続いたデフレから脱却させたい考えだが、14年は思惑通りに進まず、賃上げは物価上昇のペースに追いつかない可能性が高い。

 焦点は2014年春の春季労使交渉で、ベア(ベースアップ)を求める声が相次ぎそうだ。経団連の米倉弘昌会長も20日、政労使会議を終え記者団に「(安倍政権の経済政策である)アベノミクスによる経済拡大の成果を従業員にも配分する」と述べ、意欲をにじませた。

 ただ賃上げの動きは業績改善の進んでいる大企業にとどまる可能性が高い。中小企業は景気回復の実感が大企業ほど行き渡らず、消費増税分を価格転嫁できるのか確証がない。BNPパリバ証券の加藤あずさシニアエコノミストは「消費増税の影響もあって14年度の消費者物価指数(CPI)のうち生鮮食品を除いたコア指数は前年度に比べ2.9%上昇するが、現金給与総額は前年度比プラス1.4%にとどまり、実質賃金は低下する」と分析する。

 円安を背景にした物価上昇は「14年の夏にかけてかなりの部分がはげ落ちる」(大和総研の斎藤勉エコノミスト)との見方も出ている。実質賃金が低下し、消費増税の影響を除いた物価上昇が足踏みすれば、デフレに逆戻りする可能性も高まる。民間企業の経営判断を伴うだけに「物価上昇を上回る賃金の上昇」を達成するのは難しいと言えそうだ。

■貿易赤字は続くか?経常黒字は維持できる?
 →貿易赤字は高水準が続く公算大。活発な海外投資で所得収支の黒字額は過去最高も

 2013年の貿易収支は赤字額が10兆円を超し、過去最大となるのが確実な情勢で、14年も引き続き10兆円近い高水準の赤字になりそうだ。超円高時代に海外生産にシフトした企業が多く、エネルギーの輸入額は高止まりしている。日本の貿易構造の変化が高水準の赤字に影響することになりそうだ。

 ホンダ(7267)は12月、筆頭株主として保有する自動車部品メーカー、丸順(3422)株の一部を売却すると発表した。すでに四輪車の海外生産比率が8割弱に達しており、株式売却は「海外での現地生産を進める一環」(広報室)と説明する。トヨタ自動車(7203)も10月の海外生産台数が統計を開始した1979年1月以降で最高を記録するなど、企業の海外シフトは顕著だ。

 日本が輸出立国とはやされた時代は変化しつつある。麻生太郎副総理・財務・金融相は11月、記者会見で「貿易(輸出)が国内総生産(GDP)の中に占める比率はこのところ15%以下。ドイツは約50%、中国は30%くらい、韓国は50%超ぐらい。そういったところと(日本は)全然違う」と指摘した。日本はGDPで輸出依存度が低く、個人消費が約6割を占め内需が経済成長を左右する構造になっている。

 海外への生産シフトは経常収支では黒字に寄与する。海外投資先からの収益還元が増え「14年の所得収支の黒字は13年予測比1兆円増と、過去最高の17兆7000億円を見込んでいる」(三菱UFJリサーチ&コンサルティングの中田一良副主任研究員)といった予測も出ている。

 日本総研の山田久調査部長は「海外生産シフトはもう避けられない」と話す。経常黒字の維持には海外投資で得た収益を国内に還元し「環境や医療・介護分野などで次世代型の商品やサービスを育て、その一定程度が再び輸出に向かう循環を作ることが必要」という。

<日経電子版より>
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