■住宅投資、反動減から14年中にプラス浮上できるのか
→「反動減は一時的。政策効果で再び堅調に」
最高価格5億4200万円――。三菱地所レジデンス(東京・千代田)が9月に発売した高級マンション「ザ・パークハウス グラン千鳥ケ淵」は会社経営者や医師、弁護士などが購入し、即日完売だった。購入層の75%が50代と60代で、活況を呈した13年の住宅市場を象徴する出来事だった。
13年度で見ても新設住宅着工戸数は2008年度(103万9214戸)以来の90万戸超えを達成しそうだ。消費増税前の駆け込み需要が堅調を支えたため、14年はいったん反動減が起きる公算が大きい。ただ2つの政策が支えとなり、減速は一時的で年後半には再びプラス成長になりそうだ。
政策の1つは住宅ローン減税の拡充で、財源は1997年4月の引き上げ時の約800億円に対し今回は3100億円程度を確保する。もう1つは年収510万円以下を目安に最大30万円を支給する「すまい給付金」だ。政策効果でバークレイズ証券の永井祐一郎エコノミストは「97~98年のような大きな反動減が起こる可能性は低い」とみており、14年の国内総生産(GDP)の住宅投資は7~9月期にはプラスに浮上するとみる。
金利や住宅価格の先高観も個人の購入意欲を刺激する。三菱地所(8802)は「住宅の販売価格が底入れしたとみる顧客が動き出し、住宅購入を検討する人が増えている。市場は好調」(広報部)という。足元では注文住宅の大幅な受注減が続く住宅メーカーも期待は大きく、積水ハウス(1928)は「金利の先高観に後押しされている顧客は多い」(広報部)と話す。14年1月期の注文住宅の売上高は前期比13.3%増の見通しで、15年1月期は14年1月期と同水準かそれ以上になりそうだ。
ただ14年の住宅市場では土地や建設資材の調達競争が厳しさを増している点は留意が必要だ。全国森林組合連合会(東京・千代田)がまとめた11月の杉柱用国産丸太の国内卸価格は1立方メートルあたり1万2000円で、5カ月連続で上昇。建設業界の人手不足から労務費の高騰も目立つ。大手デベロッパーからは「住宅の販売価格に転嫁せざるをえない」との声も聞こえ始めている。
■13年度補正予算や14年度予算案でつぎ込む公共投資の効果は?
→「景気浮揚を下支え」
「コンクリートから人へということはしない」。安倍首相は12月中旬、首相官邸で中小企業経営者との懇談会を開き、公共投資を絞り込んだ民主党政権との違いを強調した。政府は大規模災害に備え、首相自らが本部長を務める国土強靱(きょうじん)化推進本部も立ち上げている。2014年も公共投資は景気の下支えに一定の役目を果たしそうだ。
安倍政権の公共投資を振り返ると、13年度の補正予算で約2兆円を投じ、14年度予算案でも約6兆円をつぎ込んだ。14年度の場合、社会資本整備の特別会計を一般会計に統合した影響を除いても前年度比で1%増の水準を確保した。エコノミストからは「13年度補正がなければ、前年度比で公共投資は約2兆円程度の落ち込みが予想されたが、底割れを回避する規模は確保できた」(丸山義正・伊藤忠経済研究所主任研究員)と評価する声が上がっている。
公共投資の伸びに呼応する形で、建設業の景況感は改善している。高水準の工事量を抱えていることもあり、日銀の12月の企業短期経済観測調査(短観)によれば建設業のDIが中小企業で17と、約21年ぶりの高水準だった。
注意したいのは建設現場の人手不足が公共投資の足かせになりかねない点だ。実際2012年度は国内総生産(GDP)確報値で公共投資を速報値の前年度比14.9%増から1.3%増に大きく下方修正した。過去の進捗率をもとに推計値で算出する「速報」だけでは公共投資の効果をはかり得ない。人手不足による工事の先送りや資材の高騰といった要因を建設会社が解消できなければ、多額の予算を積んでも消化しきれず、景気を底上げする効果も限られる。
<日経電子版より>