首相、増税決断迫られる2014年 経済の行方を展望(1)

GDPは、賃上げは、貿易赤字は…

安倍晋三首相にとって2014年は決断の年になりそうだ。プラス成長を続ける日本経済は4月の消費増税でいったん減速する公算が大きく、さらなる増税を決めるには景気の再浮上が欠かせない。経済成長と財政健全化を掲げて発足した安倍政権は正念場を迎えることになる。

 増税の最終決断は7~9月期の国内総生産(GDP)の結果が鍵を握り、首相自身「7~9月に景気が戻ってきたのかどうか、その数値が出る。その段階で判断したい」と明らかにしている。麻生太郎副総理・財務・金融相も「(14年の)12月くらいまでにはやっておかないと、(15年度)予算編成の仕方が難しい」との見通しを示している。

 そのGDPだが、成長率は8%への消費増税後いったんマイナスに転じながらも、再びプラス基調になりそうだ。日経QUICKニュース(NQN)では「GDP」を筆頭に「住宅投資」「公共投資」「賃上げと物価上昇」「貿易収支と経常収支」の5つをテーマに、14年の日本経済を展望した。13年に駆け込み需要が広がった住宅投資は政策効果が支え、引き続き好調になりそうだ。公共投資も民主党政権とは対照的に予算を投じているため景気を下支えするとみられる。消費税率10%を決断できる環境は徐々に整う公算が大きい。エネルギーの輸入額は14年も高水準が続きそうで、貿易赤字は解消できそうもない。

 焦点は賃上げと個人消費の再浮上だろう。企業がどこまで賃上げに踏み切れるのか。大企業の一部だけにとどまれば、物価上昇だけが先行することになり景気を冷やしかねない。2年目となるアベノミクスの「第2幕」は春季労使交渉が最初のヤマ場になる。

■GDP、消費増税後に成長軌道に戻るのはいつ?
 →「増税後は7~9月期からプラス成長に回帰」

 4月の消費増税後、日本のGDPはいったんマイナスに転じるが、7~9月期以降はプラスに浮上する可能性が高い。13年は高額品需要にみられた個人消費がけん引したが、14年は輸出が支える従来型の成長軌道になりそうだ。

 三菱UFJリサーチ&コンサルティングの小林真一郎主任研究員は「米国経済の回復が欧州やアジア諸国・地域に広がり、日本の輸出は13年より増えそう」とみる。米国向けには自動車の販売が伸び、アジアには設備投資向けの一般機械が輸出の伸びに一役買うことになりそうだ。

 日本経済研究センターが民間エコノミストの予想をまとめた12月のESPフォーキャスト調査によれば、実質国内総生産(GDP)は消費税率が引き上げられた直後の14年4~6月期に年率で4%台のマイナスに落ち込み、7~9月期以降は1%台後半の成長に回復するが伸び率は次第に鈍化する。落ち込みが一服しても、個人消費は物価上昇もあってけん引役にはなりにくい。

 日本総研の下田裕介副主任研究員は「景気の自律回復メカニズムが動き出してはいるが、力強くなるにはまだ時間がかかる」とみる。成長加速に必要な条件には法人実効税率の引き下げや規制改革の推進を挙げる。

 復興特別法人税の廃止は決断したが、法人実効税率の引き下げは2014年の検討課題になった。安倍晋三首相は9日の記者会見で、法人実効税率について「グローバル経済の中での競争力も考えながら検討を進めていく」と方針を示したが、結論を出せるかは見通しにくい。「規制改革と組み合わせて相乗効果を生まなければ、法人実効税率の引き下げ効果は限られる」(三菱UFJリサーチの小林氏)との声もある。日本経済の実力を高めるには公共事業に依存した既存の経済対策ではなく、抜本的な改革の進展が欠かせない。

<日経電子版より>
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