2014年予測 市場アンケート(その2)

アンケートの回答は以下の通り。
●質問
(1)2014年の日経平均の高値と安値(それらの時期)、理由。
(2)14年に魅力のある投資対象。
(3)14年の投資テーマ。
(4)13年で印象に残った出来事。
(5)14年の資金需給。
(6)考慮すべきサブシナリオや、可能性は低いが起こると影響が大きいテールリスクは。

■土信田雅之・楽天証券経済研究所シニアマーケットアナリスト
(1)高値:1万7300円(4月)、安値:1万4000円(9月
 日米の景況感や業績の改善が株価を支える。4月の消費増税の影響が表面化し始めるのは9月ごろとみており、個人消費の反動減が大きければ金融緩和による株高の効果がはげ落ち、下値を探る場面もある。
(2)景気変動の影響を受けにくいディフェンシブ性を持つと同時に、海外である程度の収益が見込める消費関連銘柄。
(3)新株価指数「JPX日経インデックス400」の算出が来年1月から始まるのに伴い、自己資本利益率(ROE)や社外取締役の人数などを詳細に分析し選別する投資傾向が強まるだろう。同じ業種内でも選別が進むとみている。
(4)2020年の東京五輪決定。
(5)海外勢の買いが続くかはアベノミクスの進展次第だろう。今は世界的な株高を背景に日経平均も上昇しているが、日本株だけ上昇を続ける理由は見当たらない。法人税の実効税率引き下げや規制緩和などの政策が進めば海外からの資金流入が続くだろう。
(6)中国の地方債務問題や、防空識別圏(ADIZ)など外交上の問題。

■藤代宏一・第一生命経済研究所副主任エコノミスト
(1)高値:1万8000円(5、12月)、安値:1万5000円(8月)
 4月の消費増税は日銀が追加緩和に踏み切るきっかけになりそうだ。企業業績の拡大期待もあり、まずは5月に1万8000円を試すのでは。米国の金融緩和の出口戦略で、米金利の上昇が意識されると、今年5月と同様の株価急落を招き、1万5000円付近まで下げる可能性がある。調整後は年末に再び高値を目指す。
(2)輸送用機器。15年3月期の業績に拡大見通しが立てば、外国人を中心に見直し買いが入る公算が大きい。
(3)イールドスプレッド(株式益回りと長期金利の差)でみる株式の投資妙味。
(4)欧州債務危機の後退。
(5)14、15年と個人向け国債の大量償還が控える。これらの資金の一部が少額投資非課税制度(日本版ISA=NISA)の口座を通じて株式市場に流入すると予想される。一方、米国の利上げ予想が醸成されれば、海外投資家の資金が細る可能性がある。
(6)日本の長期金利の上昇。米国の利上げ予想は日本の長期金利の上昇圧力になる。

■藤戸則弘・三菱UFJモルガン・スタンレー証券投資情報部長
(1)高値:1万8000円(12月)、安値:1万3500円(5月)
 引き続き円安・株高の基調は続くとみている。消費税率引き上げで家計の負担は8兆円増えるといわれるが、政府が打ち出した約5兆5000億円の経済対策の中身は公共投資と法人減税で家計を直接的に下支えする対策はほとんどない。賃上げの遅れで4月の経済指標が落ち込むことが明らかになる5月に日経平均は下落する。ヘッジファンドの中間決算(に伴う株式の処分売り)が重なるのも気がかりだ。
 年後半は雇用改善に伴う米国の景気回復が鮮明になり、欧州も回復してくる。外需主導で日本の景気が改善し、株価を押し上げる。
(2)外需では自動車、日立などインフラ輸出を手掛ける電機。世界的に需要が拡大しているスマホ向け部品を供給する精密。機械など設備投資関連や生保、不動産も魅力的。
(3)輸出の伸びと設備投資回復。
(4)13年は米国の金融政策で株式相場が動いた1年だった。バーナンキ米連邦準備理事会(FRB)議長が量的緩和の縮小に言及した5月22日の翌日に株価が急落し、11月14日にイエレン副議長の緩和維持姿勢が伝わって株価は急上昇。12月の米連邦公開市場委員会(FOMC)での量的緩和の縮小発表で一段高となった。海外ヘッジファンドは米国の金融政策を注目しているということだ。
(5)需給面の主役は外国人。今年のような13兆円規模の買い越しはなくても、高水準の買いは続くだろう。株高局面では、個人は基本的に売りを出す。年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が国内株の比率を高めるとの報道もあるが、実現には2年くらいはかかるとみている。
(6)米長期金利の急上昇。FRBに信認があれば、リスクは小さいが、次期FRB議長とみられるイエレン氏の市場と対話する手腕は未知数。異例の超緩和状態から通常の金融政策へ戻すタイミングで、米長期金利が3~4.5%へ上昇すれば、米株式相場は下がり、海外ヘッジファンドは日本株を売ってくるだろう。

■丸山隆志・日興アセットマネジメント株式運用部長
(1)高値:2万円(年後半)、安値:1万4000円(テールリスク発生時)
 消費増税の景気への影響を抑制できれば、デフレ脱却への信頼感がグローバルな投資家の間で高まる。米国の景気回復などによる一段の円安・ドル高も支えとなる。
(2)自社の技術を幅広い分野に応用し、売り上げを伸ばせる企業。自動車では電装化技術を(自動ブレーキなど)安全性を高めるために応用する動きが出ている。
(3)円安・ドル高の定着、賃金上昇などを反映したデフレ脱却、設備投資の増加による潜在成長率の高まりによる日本経済のファンダメンタルズ(基礎的条件)の改善に移っていく。
(4)従来は株が値上がりするとすぐに利益確定の売りが出ていたが、最近は上値を追う買いが入り上場来高値を更新する銘柄が目立っている。当社の中小株ファンドの純資産は昨年末から約15倍に膨らむ場面があり、より高いリターンを求める投資家は増えている。
(5)13年は日銀の量的・質的金融緩和などを引き金に、タイミングを重視し割安な株に投資する海外ヘッジファンドの買いが相場上昇を主導した。14年は3年以上の長期投資を前提とする海外の投資家の資金が流入するだろう。
(6)日中関係の悪化。世界2位と3位の経済大国の外交上の緊張関係が強まれば投資家心理を冷やす。消費増税の際には企業の価格戦略に注意が必要。安売りを仕掛ける企業があれば、価格競争の激化で業績が悪化しかねない。

■三沢淳一・三井住友トラスト・アセットマネジメント執行役員株式運用部長
(1)高値:1万8000円(12月)、安値1万5000円(9~10月)
 米FRBが慎重に量的緩和の縮小を進めれば、米国株の上昇や円安につながり、日本株は好感するだろう。4~6月は円安や景気回復で企業業績改善の期待が高まるが、夏場に消費税率引き上げの影響や会社計画と実態のかい離などで投資家は慎重になる。もっとも米国の量的緩和の縮小が順調に進めば緩やかな円安基調が続き、秋以降に業績改善の期待が再び高まる。PER(株価収益率)が切り上がり、15年3月期末には日経平均は2万円台も意識される展開になるとみている。
(2)同業種の中で収益力の高さなどから明暗が鮮明になってくる。
(3)「JPX日経インデックス400」算出開始をきっかけに、資本の効率性などが投資のテーマになる。
(4)安倍政権の政策は基本的に消費者、投資家、企業の心理に働き掛け、投資や消費が増え円高是正も進んだ。デフレスパイラルを脱するという政策姿勢全体を評価したい。米国は量的金融緩和の縮小を始められるほど景気回復の強さが出ている。
(5)株高局面では個人から売りが出やすいが、今年は証券優遇税制の廃止という構造的要因が売りを増幅させた。14年は個人の売りに歯止めがかかるとみている。外国人が主力の投資家であるのは変わらないが、買いは今年ほど高水準とはならないだろう。
(6)米国の量的緩和縮小などで余剰資金が減って新興国の景気が減速する。もっとも今年5月のバーナンキFRB議長の発言に伴うショックを経験して、投資家の反応は限定的になるとみている。

<日経電子版より抜粋>
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