アンケートの回答は以下の通り。
●質問
(1)2014年の日経平均の高値と安値(それらの時期)、理由。
(2)14年に魅力のある投資対象。
(3)14年の投資テーマ。
(4)13年で印象に残った出来事。
(5)14年の資金需給。
(6)考慮すべきサブシナリオや、可能性は低いが起こると影響が大きいテールリスクは。
■石金淳・三菱UFJ投信チーフストラテジスト
(1)高値:1万9000円(12月)、安値:1万5500円(1月)
来期の企業業績は全体で今期比15~20%増益になると予想している。業績の伸びが株価を押し上げる。円安と海外景気の回復を支えに、輸出関連株が相場全体を支える。消費増税の影響は想定より大きいとみており、内需関連銘柄では苦戦する業種もありそう。安値は1月、高値は12月だが、一本調子の上昇ではなく、増税の影響で夏場に株価は調整するだろう。秋には米中間選挙があり、米景気を刺激する策が出て日本株も再び上昇に転じる。
(2)輸出関連株。世界中でインフラ投資が活発になり、特に機械や重電に注目している。中長期の視点なら、国土強靱(きょうじん)化計画の恩恵がある建設株も魅力がある。
(3)円安がどこまで進行するか。米国など先進国の景気の回復度合いも注目。
(4)2020年五輪の東京開催決定。経済効果も見込めるが、バブル崩壊後に評価が低かった日本経済を世界が見直し始めた出来事と感じている。
(5)海外投資家は買い姿勢を続ける。個人は高値で買っていた株が安値から戻ってきたのに伴う売りが今後減ってくる。
(6)中国や北朝鮮を巡る地政学リスク。特に日中関係が緊張すると、日中貿易が減り、輸出関連株の業績悪化要因になる。原油を中東から輸入するルートに支障が出る可能性もある。
■石黒英之・岡三証券日本株式戦略グループ長
(1)高値:2万円(12月)、安値:1万4500円(2月)
欧米景気が回復するうえ、米量的緩和の縮小で円安基調が定着し、株価は年末に向け上昇するとみている。日経平均の予想EPS(1株利益)を1100円、PER(株価収益率)を18倍程度とすると1万9800円となり、2万円近くまで上昇するのでは。2月は消費増税による需要減を株価が織り込む動きで下押し圧力が高まるとみている。
(2)消費関連は相対的に堅調な分野。高級品の三越伊勢丹や日用品のセブン&アイなど勝ち組企業への選別が厳しくなる。
(3)脱デフレ。賃金上昇に向かえば株式市場は歓迎するだろう。デフレに逆戻りするとの思惑が広がれば相場環境は悪化する。
(4)日銀による4月のバズーカ砲のような金融緩和が株高をけん引した。12月の米連邦準備理事会(FRB)による量的緩和縮小も絶妙の手綱さばきだった。
(5)米国が量的緩和の縮小を始めたとはいえ、世界的にまだ資金はだぶついている。金利も低い。円安などを背景とする業績改善期待で日本株へは海外投資家の買いが続く。
(6)国内の政治の混乱。成長戦略などを巡り与党内が対立し政策が停滞すると投資家は嫌気する。政治への失望感の強まりがリスクになる。
■荻原健・みずほ信託銀行運用企画部チーフストラテジスト
(1)高値:1万8000円(12月)、安値:1万4500円(3月)
来春にかけ債務上限の取り扱いを巡り米議会が再び緊迫すれば、日本株の下押し圧力になりそう。円安などを背景とする15年3月期の増益を織り込み始めると1万8000円を試す。
(2)輸出関連株、不動産株。
(3)円安傾向が続くかに注目している。設備投資の増加や賃上げも景気回復のために重要。
(4)日銀による量的・質的金融緩和。
(5)海外投資家はまだ買い余力がある。日銀の追加緩和や規制改革への期待などを背景に日本株への資金流入は続きそう。少額投資非課税制度(日本版ISA=NISA)を利用した個人の買いも相場を下支えする。
(6)米金利の急上昇などで金融緩和の出口戦略の失敗が意識されることや、中国の「シャドーバンキング(影の銀行)」問題の表面化。国内では、消費増税による個人消費の想定以上の冷え込み。
■菊池真・ミョウジョウ・アセット・マネジメント代表
(1)高値:1万6500円(1月)、安値:9000円(12月)
日経平均の予想EPS(1株利益)は現在970円ほど。年初までは買いの勢いが続くが、2月頃には通期予想を下方修正する企業が増える。EPSの減少で、株価は上昇しにくくなる。年末にかけ徐々に株価は下落基調となり1万円を下回る可能性もある。
(2)日銀の量的・質的金融緩和の恩恵を受ける金融、不動産株には買いが入る。半面、消費増税前に需要が盛り上がった住宅メーカー株などは苦戦するだろう。円安基調が業績を押し上げる自動車株以外は、製造業の下押し圧力が高まりそうだ。
(3)「アベノミクス」の実行力。海外投資家は所得増加が可能か見極めようとしている。インフレだけ発生し所得増加が伴わなければ景気を下押しするリスクが高まる。
(4)5月23日の相場急落。4月の急伸後だったので印象に残った。12月に米連邦準備理事会(FRB)が量的緩和の縮小を決めたのも印象に残る。
(5)新興国の景気が減速している。日東電工が業績予想を下方修正したように、新興国の景気に左右されやすい企業は多い。14年3月期の業績が芳しくない企業は増えてくるとみられ、海外投資家の銘柄選別が進むだろう。国内の政治の停滞も海外投資家の売り材料になるとみている。国内勢の動きにはさほど変化はないだろう。
(6)中韓にリスクが潜む。中国は内政に問題を抱え、国内の混乱が大きくなれば、目をそらすため反日機運を高める可能性がある。韓国は経済を数社の大手企業が支える構造。大手企業の業績が低迷すれば、不況に陥って97年の経済危機に近い状況になりかねない。
■塩村賢史・大和証券シニアストラテジスト
(1)高値:1万9000円(12月)、安値:1万5000円(1月)
4月の消費増税前後に日銀が追加緩和するとみている。緩和期待で円安・ドル高が進み、輸出関連株を中心に日本株にプラスに働くだろう。年後半は材料が乏しくなり、米中間選挙への警戒感なども出てくるが、年末にかけては徐々に持ち直すだろう。
(2)メガバンクなど金融、不動産、自動車に注目。株価に出遅れ感のある家電も期待できそう。
(3)自社株買いを含めた株主還元。厚生年金基金の解散。財政難の基金に5年以内に解散を促す法律が来年4月に施行し、株の売り要因につながる可能性がある。
(4)日銀の量的・質的金融緩和。今年の株高の大部分を支えた。1年前は半信半疑だったが、デフレ脱却の兆しも出てきた。
(5)個人など国内勢の売りは今年末に証券優遇税制の廃止を控えていた面も大きい。年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は有識者会議で株式投資の拡大を検討しているが、それをにらんだ買いも期待できる。
(6)北朝鮮の混乱や中国を巡る安全保障問題。米国の債務上限問題も100%片付いているわけではない。
<日経電子版より抜粋>