あの世のことなんぞ信じていなかった著者は、
米国にて脳神経外科医をしていた男だった。
生死彷徨う患者を多く目にしてきており、
崖っぷちから生還してきた患者の多くがあの世の話をする、
そういう現場を数多く経験してきたものの、
頭の中では、神の存在について、常に疑問が渦巻いていた。
人は、自分の経験したことしか理解できない。
無理もない話だ。
★「Proof of Heaven ~脳神経外科医が見た死後の世界~」
エベン・アレグザンダー著 白川貴子訳 早川文庫(日本語版翻訳権独占)1,700円+税
全米200万部突破
読んでみると、呆気にとられるくらいあの世の話は少なかった。
でもそれには、原因がある。
医師である著者には、あの世の美しさを表現できる言葉が足りなかったからだ。
オイラが早川文庫の編集長だったら、
是非、村上春樹を渡米させ、エベンからもっと詳細な話を聞かせる。
村上春樹なら、それをオモロイ小説仕立てにして、代弁することができるだろう。
ところで、オイラにとってはあの世の話よりも、
エベンには意外だろうけど、医学的な話の方がオモロイと思った。
エベンは、世にもまれなグラム陰性・大腸菌性髄膜炎に罹患した可能性があった。
この病は、千万人に一人でるかでないかの病気で、しかも助かる見込みは非常に薄いという。
大腸菌が遺伝子獲得によって変化していく様は、「バイオハザード」でも読んでるかのようだ。
エベンはこの生死を彷徨う病気の陰で、あの世に行ってきたというのだ。
また、人間の「意識」についての考察は、哲学的で考えさせられるものがある。
オイラが自分で思いついたと考えていることは、
実はもしかして、他の意識体がオイラの意識に混入してきていて、
そう思わせているだけじゃないのか?
結局オイラが自由意志だと思っていることは、他の意識体に導かれているんじゃないのか?
誰だって思い当たることがあるだろう。
自分としてはこうしたい、あーしたいと思っていても、
どーにもならないことがある。
例えばオイラの場合、本当は建築学科に行きたいと思っていたのに、
当時、どーあがいても薬学にしか行けないという結果になっているとか。
そういう制約の中でも、人というのは本能的に自由意志であがくのだけれども、
その制約がもたらした偶然なおかつ必然という帰結に、呆然とすることはないだろうか?
オイラは若い頃に、神社で不思議な体験をしてからというもの、
そういう「他の意識体」という存在をひしひしと感じて生きてきたので、
エベンの語っていることが腑に落ちる。
今ではそれに、河合隼雄の「コンステレーション」という概念が加わって、
人生のオモロサが倍増しているところだ。
http://www.youtube.com/watch?v=Yz0TwTfZwO0
「Ever Since We Met」 Chris Botti
結論:この書籍は、例えばあの大槻教授が、あの世に目覚めるというような話。。
PS:この書籍は、伊勢白山道さんのブログで紹介された。