そら豆の株予報さんのブログ

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11月米雇用統計の金融政策への意味―FRB担当記者が読み解く

6日発表された11月の米雇用統計の数字は、金融政策を司る米連邦準備制度理事会(FRB)にとって概ね歓迎される結果だった。これが今後の政策にどう影響するか5つの角度から探った。


 緩和縮小開始が視野:非農業部門雇用者数の増勢が強まっていることが確認されたことは、FRBが月額850億ドル(約8兆7400億円)に上る債券を購入する量的緩和策の縮小への道を開くもので、縮小開始が12月か1月に始まる確率を高めたことを意味する。一部の市場予想を裏切ってFRBが縮小開始を見送った9月と現在の労働市場を比較してみてほしい。ここ3カ月間の雇用増加数は平均して19万3000人となっている。9月時点での同じ数字は14万3000人だった。11月の失業率は7%なのに対し8月は7.3%だった。さらに9月時点では、連邦政府が一部閉鎖に向かい債務上限危機の可能性も出ていたタイミングだった。しかし現在は政治家たちが静かに今後1年の政府支出の抑制計画を策定しているように見受けられるとともに、連邦分の増税と支出削減による逆風が弱まり、来年の経済成長を加速させる可能性が出ている。


 市場は縮小開始が金融引き締めを意味しないと了解:債券の月次購入額の「漸減」を見送った9月と比べ、市場参加者の考え方はよりFRBが好む方向に向いている。とりわけ言えることは、緩和の縮小を始めたからといって短期金利の引き上げを急いでいるわけではないというFRBのメッセージが市場に浸透しつつあることだ。各種先物市場の価格は、2014年末までの金利引き上げを織り込んでいた9月の価格とは対照的に、2015年の前にFRBの金利引き上げが起こる確率が非常に低いとみている数字となっている。ここ数カ月FRBは「漸減は引き締めにあらず」との姿勢を理解してもらう努力を続けてきたが、縮小開始が現実的な検討課題となった現時点で投資家がFRBの考え方を了解していることに安心感を持つとみられる


 縮小開始のタイミング:FRBは次回17、18日の連邦公開市場委員会(FOMC)で、債券購入額の漸減をすぐ始めるか、バーナンキ議長の最後のFOMCとなる次々回の1月28、29日会合、あるいはその先まで待つかを議論することになるとみられる。1月まで待てば、FRB当局者が最近強めている経済への楽観的な見方を確認する時間が少しできることになる。加えて債券購入プログラムの出口戦略を確定し市場にその準備をさせる余裕を与えてくれる。今後の政策の全体像とそれをどのように市場に伝えて行くかについて、FRBは市場に答えなければならない疑問をまだ多く抱えている。一部のFRB当局者は債券の総購入額について、無制限のままとすることをせずに、上限を設けることを希望している。また、短期金利を何時上げるかについて市場へ手掛かりを与えるフォワードガイダンスを再び変更するかについても、FRBはここ数カ月内部的に議論している。

 このフォワードガイダンスの問題と関連しているのは、債券購入プログラムで複雑な操作をしているのと並行してこのガイダンスを変えていいのか、またもしそうするならこの同時変更をどう説明するかの議論だ。FRBはまた、民間銀行の準備預金に支払っている0.25%の金利を引き下げるかどうかについても議論している。バーナンキ議長はこれまで政策の大きな措置を取る時は数カ月をかけてコンセンサスを形成する傾向があった。これを踏まえると、今回の政策変更も少し時間を置くかとも読める。経済的にみれば、もう少し待って850億ドルかあるいはそれより少し多くをすでに4兆ドル近く膨らんだFRBのバランスシートに上乗せすることはそう大きな問題ではないだろう。ただ何カ月にもわたり「漸減」の可能性を市場に伝えてきただけに、現在の経済状況と今後の見通しについて十分な確信が出来たとして直ちに縮小開始に踏み切る可能性もある。


 ほっと一息:FRB当局者は現在確実にほっと一息を付いているはずだ。彼らの大半がここ数カ月内で債券購入プログラムを終了させることを希望しているからだ。経済が十分強くなったのでプログラムを終了できる状態になることをずっと望んでいた。雇用数の増加は、経済の強さを主張するのに根拠となり得る数字だ。終了の別の説明の仕方の選択肢としてあるのが、購入を継続するコストが、その利点を上回るようになったというものだ。ただ、FRBはこの説明の仕方をこれまで決してしたがらなかった。その一つの理由は将来的に再開する場合の障害となるからだ。労働市場の改善は、経済が強くなり議論の多かったこのプログラムのが終了の始まりとともに、バーナンキ議長が1月に胸を張って退任するチャンスを与えている。


 全てが朗報ではない:11月の雇用統計は全て良かったというわけではない。もっとも頭が痛いのは失業率だ。この数字の示す傾向を見るには9月と11月の数字を比較するのがよいと思う。というのも10月の数字は政府の一部閉鎖の影響で歪められているからだ。9月から11月にかけ、失業率は7.2%から7.0%へ低下した。これ自体はよい傾向だ。しかしその理由が問題だ。この間に雇用は8万3000人しか増えていないのに対し、労働力人口は66万4000人減少している。失業率減少のおおむねの理由は、職探しを止めたために「失業者」としてカウントされる人が減少したからだ。労働参加率はこの間に63.2%から63.0%へていかしており、長期にわたる失業からヒステリーを起こして職探しを止めたことを改めて示す数字だ。

 これらのことはFRB政策にどんな意味を持つだろうか?それはFRBが失業率低下を喜ぶに足らないとみているということだ。これまで失業率が6.5%を下回らない限り短期金利は引き上げないとFRBは言明してきた。この失業率低下の感心しない原因は、FRBがこの6.5%という目安を下回っても、金利の引き上げを開始するのはその後長い間様子を見てからとの考えに傾いていることを意味する。FRBが失業率にあまり重きを置かなくなっていることはこのところの債券購入プログラムに関する発言にすでに表れている。6月の時点でバーナンキ議長は、FRB当局者らが失業率が7%へ下がればプログラムを終了できる可能性があると発言していた。しかし既に7%になっているのに縮小開始さえ起こっていない。議長は7%目安が間違いだったと明らかに思っている。


<The Wall Street Journalより>

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