リスクとは日常的には危険性の程度という意味で使っている。リスクを取るというのは危険を冒すということである。しかし、ファイナンスの理論とか統計の世界では変動率のことをいうのでボラティリティや標準偏差などはほとんど同じような意味を持つ。変動が激しいときはリスクが高い、すなわち危険だということになる。ところが何の変動を見るかにより意味する中身がかなり違ってくる。
投資ファンドの成績をみる場合には数年間の利益のバラつきを見る。例えばある投資ファンドの過去10年間の平均の年利益率が10%、バラつきの程度(標準偏差)が6%だったとするとリスクとはこの6%のことである。この投資ファンドを買えば年間利益率が10%±6%の間に入る確率はおよそ65%である。リスクと期待値の関係を端的に表すのがシャープレシオで市場金利をゼロとすればこの場合シャープレシオは10/6=1.67となる。シャープレシオ2.0以上で優秀、1.0以上でまあまあという評価のようだ。
個別銘柄やインデックスの価格の変動についてはボラティリティという言葉が使われる。これもバラつき=標準偏差のことだが、投資ファンドの例とはバラつきを測る対象が違う。投資ファンドの場合は各年の利益率のバラつきを対象とするが、インデックスのボラティリティとは一定期間の日々の株価の変動率(当日株価÷前日株価)のバラつきを年率に置き換えたものである。毎日一定の比率で上昇したり下落したりすれば変動率は一定なのでボラティリティはゼロとなってリスクは非常に低く極めて安定した運用ができることになり、これは分かりやすい。逆に高値波乱のように乱高下するときには変動率のバラつきが大きくリスクが高いので、一般的には利益を出すのは難しいと言える。
1日新値法など短期順張りスィングでトレードする場合、月間変動率の平均と年間利益率の相関関係を調べると明らかに変動率が高い方、すなわちリスクが高い方が利益率も高くなる傾向がある。正にハイリスク・ハイリターンである。ところが逆張りではまったく逆で、変動率が高ければ危険が高いだけで期待利益率もマイナスになる。そして変動が少ない方、いわばローリスクの方がハイリターンになる。ただ、順張りが上手く行ったときのハイリターンのレベルは2倍3倍は普通にあるのに比較して逆張りで年2倍のリターンを獲得するのはかなり難しいと思う。
信用取引、先物取引、FXなどでレバレッジを高くかけると収益の変動が大きくなり、大きな損失を被ることもあるので、リスクが高い取引と言われることも理解しやすい。逆に自分が耐えられる損失が分かっていれば、このレバレッジを調整することでリスクもコントロールできる。私は個別銘柄については最大ドローダウンが20%程度になるようにレバレッジを調整している。