中国や欧州のバブルの行く末を読むためには、まず、バブル崩壊のメカニズムと合理的処理策を理解しなければいけない。 合理的方策が分かってなければ、バブル処理の誤り度合や、それによる悪影響度合も推測しようがない、、、、、、(--;
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バブルでは人材・資金など経済資源配分の非最適化が起きる。
これは、ある分野が生み出す付加価値以上に、その分野に経済資源が集中してしまうことで起きる。
そうなるのはバブルで資産価格の過大評価が起きるから。
不動産バブルにより不動産開発に経済資源が過度に集中するのがその一例。
経済資源配分の非最適化は、バブル時代にありがちな放漫経営でも起きる。
持続可能な稼ぎで養える以上に、沢山の人材を高給で雇ったり(過剰雇用)、銀行から資金を借りまくったり(過剰債務)、設備投資・金融投資しまくったり(過剰投資・生産過剰・過剰在庫)ということがあちこちで起きる。
バブルで起きる経済資源配分の非最適化により、潜在成長率(好不況均しの平均的経済成長率)には下押し圧力がかかる。 これがバブルが引き起す最大の問題。
潜在成長率下押しの経済損失は、中長期かつ広範囲にわたるのでハッキリ見えにくいが、累積的には莫大になる。 ハッキリ見えにくい故、政治的に問題になりにくく、政治家が愚鈍だとこの状況は放置されやすい。 経済は全ての基盤なので、これは国家の凋落に直結する。
バブルで起きるもう一つの問題は、バブル崩壊に伴うもの。
バブル崩壊では、資産価格の下落>含み損の拡大>設備投資意欲・消費意欲の減退>景気低落(デフレ化)>企業・個人の収益低下・返済能力の低下>不良債権(焦げ付き融資)の増大>投資・融資の引き上げ>企業の倒産リスク(資金ショートリスク)増大>資産価格下落>、、、、の悪循環(負のスパイラル)が起きる。
この悪循環は、投資家が資産価格の過大評価に気付くことで起きる。
資産価格の過大評価がある場合、売り逃げ遅れた投資家は莫大な損失を被ることになる。
そこで、われ先のパニック売りとなり、資産価格の下落が始まるのです。
で、これはパニック売りゆえ、最終的に資産価格の過剰下落、不良債権の過剰増大となる。
不良債権は最終的に金融の最上流たる銀行に集中し、銀行は多額の含み損を抱えることになるので、貸し付けを行えなくなる(自らの倒産を防ぐため貸しはがしに動かざるを得なくなる、、そうしなければ銀行倒産危機、預金引き上げパニックとなり経済は破たんする)。
銀行を起点とした『主流の資金循環』がフン詰まり状態になるので、経済はマヒし、景気低迷、企業経営悪化、倒産増大、失業増大となる。
つまり、バブルで起きるもう一つの問題は、バブル崩壊後の資産価格の過剰下落による不良債権の過剰増大。 これは景気の過剰落ち込みを起こし、倒産・失業など分かりやすい経済損失になるので、政治問題化しやすい。 しかし、その経済損失は比較的、局所的・短期的。 そえゆえ、その累積的損失は、潜在成長率低落での損失ほど大きくない。
以上から、バブル崩壊後は、資産価格の下落を止める>不良債権を処理する>資源配分のひずみを正す、、という3ステップの経済政策が必要と分かる(前二ステップは倒産・失業抑止に絡むので早急に必要)。
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資産価格の下落を止めるには十分な金融緩和が必要である。
金融緩和により金回りを良くしてリスクをとりやすくすること、資産市場にお金が流れ込みやすくなるようにすることが必要。
このための方策は短期金利の利下げ、通貨供給量の増大の二つ。
しかし、バブル崩壊後は銀行経由の資金循環はマヒしてるので、短期金利の利下げはあまり効かない。 バブル崩壊後の資産価格下落抑止に効果的なのは通貨供給量の増大である。
それぞれのバブルで特徴的に下落する資産は異なるので、その資産にターゲットを絞って通貨供給量を増大させることがポイントになる。
通貨供給量を増大させると、投資家は資産価格上昇を先読みし(これがインフレ予想の始まり)、売り逃げ、売り浴びせから買い向いに転じてくる(先読みこそ投資収益増大、投資損失圧縮の源泉なので、投資家は必ず先読みしてくる=インフレ予想は必ず通貨供給量とその方向性に感応する)。
資産価格の下落が止まると不良債権の増大も終息してくる。
そうなると不良債権の処理は比較的容易になる。 不良債権処理に伴う損失額が特定できるから。
逆に、資産価格下落抑制措置が不十分なまま(=通貨供給量増大が不十分もしくは方向音痴なまま=投資家のインフレ予想を十分高めないまま)、不良債権の査定を進めるとおバカなことになる。 公表不良債権額が後になるほど膨らむので、投資家の政府不信が強まってしまい、パニック売りが断続的に続き、資産価格の下落が止まりにくくなるのです。
さて、不良債権額が特定出来た後、不良債権処理に進むが、そこで行うのは、銀行など金融機関への資金注入(税金投入)。
不良債権は最終的に、金融の最上流たる銀行に集中するから、銀行に(回収不能な)不良債権の損失処理をさせること、それによって銀行が破たんしない程度に税金投入することがどうしても必要。
銀行破たんが多発すれば、預金引き上げパニック、優良企業の資金ショート、連鎖倒産が起き、バブル崩壊の悪循環が却って巨大化するので、不良債権の損失処理で銀行に責任を取らせるにせよ、銀行破たんまで詰め腹を切らすことは回避する、そこは税金投入で助けてあげることがトータルの国民損失を極力抑えるためには必要になる、、、、余程の放漫経営がない限り
(銀行破たんまで責任を負わすか否かのの線引きを、それぞれのバブルの特徴に応じて透明化することも必要です。。これはリーマンショックの教訓。 ここが不透明だと市場に不意打ちとなってやはり投資家のパニック売りを引き起こす)。
ちなみに、銀行に投入した税金は景気回復、銀行経営の正常化に伴い、長期的に返済される(返済期間の長さと返済金利の低さが最終的な国民負担。 バブルで踊るのは国全体だから痛み分けということ)。
銀行は不良債権の損失処理により痛むが、公的資金注入で生きながらえる。
しかし、ほうほうの体で生きながらえるので、銀行起点の資金循環を十分復活させるには、銀行経営をサポートする措置が必要になる、、、これは銀行を助けるためでなく、経済全体を復活させるための措置。
ここで生きてくるのが、通貨供給量の増大(資産価格アゲアゲ措置、かつ銀行の資金ショート抑制措置)に加え、短期金利の利下げ。
銀行の稼ぎは、短期資金借り入れ(預金や対中央銀行や銀行間の資金調達)と長期貸し付けの利ザヤで得られるので(つまり、自転車操業。自転車操業の手間とリスクが利ザヤの源泉)、不良債権処理終了で痛んだヨレヨレの銀行を立たせ、資金循環の役目を再度行わせるには短期金利の利下げ=利ザヤの拡大が必要になる。
不良債権処理後の経済政策のポイントは短期金利の十分な利下げ(この時点では通貨供給量の増大も未だ重要)です。
以上のようにして、銀行起点の資金循環が復活し、景気も資産価格も過剰下落から再浮上すると、不良債権は縮小し、失業問題は自然解消され、銀行の公的資金返済も進むようになる。 こうして経済は正常化していく。
バブルで起こった資源配分のひずみ是正は、まず投資家のパニック売りで資産市場において急速に進み、次いで銀行の資金回収で進み、更に資金回収で傾いた不良債権先企業の赤字部門の売却や撤収、もしくは不良債権先企業の解体・倒産で進む。
そして、それらの行き過ぎは景気回復過程での自由市場における投資家の投資行動や銀行の融資行動で調整されていく。
企業価値・事業価値を適正評価した投資・融資=最適資源配分に資する投資・融資が、投資家・銀行に最大収益をもたらすので、投資家・銀行の投融資行動は必然そこに収束していく、、、投融資の収益・リスクに無縁な公的機関にはこの調整は行えないので、資源配分の歪み是正、最適資源配分には自由市場が絶対必要。
これは不良債権先企業の赤字部門売却、解体処理でも同じで、それを最適に行うには、解体ファンド(いわゆるハゲタカファンド)、買収ファンドなどファンドが自由に活動できることが必要。
解体・買収でのファンド収益最大化は、解体資産・買収資産の適正評価=資源配分の最適化とリンクしており、適正評価は解体・買収の利益・リスクを直接負わない公的機関にはできないのです。
不良債権先企業の解体・撤収・倒産を政治的に抑える措置は、そこに至るまでの経営者・従業員・株主の行動を無罪放免しつつ、それと無関係な国民に救済(?)税金負担を負わせることになるので、資源配分の歪みを持続させるだけでなく、国民間に不公正をもたらすことにもなる。
不良債権先企業の部門売却・解体・倒産処理は、銀行破たんで起きる無秩序な連鎖倒産、優良企業の連鎖倒産(資金ショートによる黒字倒産)とは異なる。
それは、赤字企業の秩序だった処理であり、部門売却・解体・倒産させないほうが社会全体に経済損失は大きくなるし、赤字企業従業員にとっても稼げないとこにへばり付き続けることになり、中長期的にはリスキーになる。
以上をまとめると、資源配分の歪み是正に必要なのは、投資、融資、(企業・部門の解体・買収など)ファンド活動における自由市場の存在であり、政府(公的機関)関与の排除、政府規制の緩和ということになる。
政府など公的機関が投資、融資や不良企業処理に関わるほど、自由市場は阻害され、最適配分からかい離する。 政府が投資家・銀行の投融資行動やファンドの解体・買収行動を規制するほど、自由市場は阻害され、最適配分からかい離する。
また、不良債権先企業の再編がスムーズに進むように、解雇規制の緩和(=再就職の容易化)、失業保険など社会保障の整備も必要。 これらにより失業の痛みは許容範囲内に抑えられ、再就職までの期間は短縮される。
景気回復のための財政出動は、政府による投資と同義ゆえ(上記記述で自明な如くリスクフリーなので)、当然、資源配分の歪みを拡大させるのものになる。 バブル処理では基本、禁じ手です。
財政出動は、政府が上記バブル処理から外れた処理を行い、失業率を非常に大きくしてしまった場合の一時的避難措置としてのみ行わざるを得ない措置(当然、そこに至った政府責任は将来の選挙で負わせられるべき)。
行う場合は自由市場を歪ませないように、失業保険への税金補てん(=広範な失業者の生活下支え&消費喚起)>国民全体への期間限定クーポンの配布による消費喚起、、の優先順位で行うのが合理的。
バブル処理の政府ミスで景気落ち込みがひどくなってる状態なので、減税は効果が低い。 特定業界経由でばらまく公共事業などは資源配分の歪みを却ってひどくするので最悪の措置。 減税、公共事業を行うのは不合理、誤り(ただし、減税は経済に占める公的部門シェアを下げ、市場原理がすぐに働く領域を拡大するので、潜在成長率増大方向に効く。中長期的には常に望ましい政策である)
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以上のバブル処理策に比し今般の中国バブルはどうか?
彼らは、通貨供給量は十分高めたままだし(通貨安固定政策の堅持)、不動産投げ売りなど資産価格下落を強制的に抑制することも可能(数値操作も!)。
不動産投げ売りを起こしえないシステムとも言えるが、結果的に売買が細ってているので実質、バブル崩壊。 しかし、その損失は市場がほぼ消えてたり、数値がいじられてたりで外部からは分かりにくい。
つまり、市場の不透明性を高めつつ、緩やかなバブル崩壊を指向しているように見える。
一方、通貨供給を高位に高めつつ、短期金利上昇は時々放置している。
これは一見矛盾したように見えるが、金融機関に資金ショートの恐怖を与え、緩やかなバブル崩壊下で地方政府の暴走、不良債権の更なる増大を防ぐための措置と考えられる。
バブルを急激に処理するためでない。
バブルの急激崩壊を恐れる向きがあるが、中国はマクロ経済はほぼ完全に政府管理下にあり、ミクロ経済も国有企業は護送船団。 国有企業以外のミクロ経済がレッセフェールなだけで、この領域のシェアはリーマンショック以降、縮小している。
つまり、市場が透明でなく、透明ゆえ急激にバブル崩壊が起きる自由経済体制とは本質的に異なる(リーマンショック以降、反自由経済の度合いが更に強まった)。
これは、急激なバブル崩壊が必然な自由経済体制(前回、中国バブルの日記を参照のこと)よりも良いように見えるが、市場の最適配分機能が効きにくく、資源配分の偏在状態が長期化するというデメリットがあり、トータルではマイナスである。
中国はこれに対し、民間不良債権先企業の赤字部門は潰れるに任せ(強制回収)、黒字部門は国営企業に吸収(強制接収?)させる方策を取った。
要するに国がハゲタカファンドになったわけだが、社会保障がないので、一部(かなりの?)国民の不満が高まっている(これは共産党に集中する警察力・軍事力で押さえ付け可能)。
また、市場原理が働きにくい国有企業に集約したので、資源配分の最適からのかい離は更に進む可能性が高い(軍事力・警察力同様、富も共産党に集中)。
不良債権として残るのは、地方政府などの不動産投資(これが巨額)だが、これには強制回収はあり得ないし、現状、中央政府に処理余力(資本注入余力)は十分あり、と目されている。
処理余力不十分でも、急激なバブル崩壊を抑止できる中国では、処理を先延ばしし、通貨安固定政策継続でそこそこの景気を維持する中で漸次処理という方策を取ることも可能(その過程で中央政府の地方政府への支配力を強める、ということも行われるかも)。
バブル崩壊の不況もあり、改革派(リコノミストなど)は力を失い、左派(解放軍含む)が力を強めつつあるので、この点からも経済の自由度が狭められ、資源配分のひずみが固定化される方向になるでしょう。
しかし、左派とはいえ、鄧小平前の貧しい時代に戻ることなど望んでない。 利権維持・拡大のため、自由市場圧殺とまではいかない。
結局、今回の中国バブル崩壊で大きな混乱は起きず、バブル処理は不十分になり、バブル崩壊のたびに共産党の支配強化、潜在成長率下押し圧力の増大が進むことになるでしょう(通貨安固定政策を維持する限り、バブルは起きやすく、それによる潜在成長率低下が臨界点を超えたときが大きな混乱が起きるとき、、、しかし、そうなるまでには成長率低下に呼応した先進国企業の漸次撤収も進んでいる)。
だから、中国は潜在成長率を上げるために産業スパイ活動、特に日本からの技術取り込みを強化している。 最近の日本への秋波もその一環であり、(概ね左翼的な)日本マスコミの対中融和論説や、今後起きるであろう対中融和ニュースの喧伝はそれへの側面支援。
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中国で起きてることは、不況を利用しての、役所(党)への資金・権限集中、焼け太りである。
これは日本と類似の構図。
違うのは、中国は長期インフレ政策でそれを行い、日本は長期デフレ政策でそれを行っていることであり、今後もそれらの路線が続く可能性が高い。
これらの政策は官僚支配強化、潜在成長率下押しという点で同じだが、前者(中国側)のほうが当然、軍事力を高めやすい。
現状、自民政権は、中国に侵略されないように同盟を駆使して軍事的に対峙しつつ、双方の官僚支配体制継続、利権維持のためにサポートし合う『外交ゲーム』を行おうとしているように見える(左翼政党や左翼マスコミはもっと亡国的で積極的に中国の下につく路線)。
そうでなければアベノミクスの矛盾、、、『金融緩和+財政出動+増税』の不真面目な経済政策=官僚支配強化路線は説明できない
(財政出動は利権増大と潜在成長率下押し、税収伸び悩みになり、それを穴埋めするための増
税、税率アップは、役所の資金シェア拡大、権限強化になる。 で、増税実施しやすい程度の金
融緩和拡大、景気浮揚が時々成されるが、財政悪化状態維持=更なる増税の根拠作りのため
に金融緩和は不十分にされ、不景気、税収伸び悩み状態が長期化される)
アベノミクスは、日本復活でなく、利権維持を目的にした経済政策であり、その延長線には中国と官僚支配体制を相互サポートし合う『外交ゲーム』が当然ある(『中国とはゲームが出来る』という官僚、政治家の言にはこういう含意があるのでは?)
こういう路線は持続可能だろうか?
否、持続不能。
中国の対日軍事優位が拡大していくうえ、日本の経済力・防衛力は相対的にますます小さくなるので、米国との同盟関係が従属関係に変質していくからです(現状は左翼マスコミが言うほど、そうなってない。日本の経済力が強いからそれは当然)。
長期的に日本は対米従属国家になり、中国も漸次、欧米に圧倒されていって、欧米優位、人種差別の19世紀が再現されることになると思う。