世界の金融市場、潤沢な流動性を来年にかけて維持へ
9月18日からの6週間で、S&P総合500種は3.5%上がり、米国債相場も高くなった。高利回りのジャンク債や金、ユーロ、さらには最も方向性を読むのが難しく投機的要素が強い「フロンティア市場」までも、値上がり率が3%を超えた。
ドルが今年の値上がり分を失って新興国通貨の大幅な売り圧力が弱まり、新興国の中央銀行の外貨準備にのしかかっていた緊張もほぐれた。
これらの外貨準備が主に西側諸国の債券に投資されていた点を踏まえると流動性に関する好循環が生まれたように見受けられる。
一方でドル安に伴うユーロと円の上昇で、日銀や欧州中央銀行(ECB)が追加緩和に動く可能性は高まった。
こうした中で世界的に流動性は新たな拡大局面に入ったように思われる。東京、ロンドン、フランクフルト、ニューヨークといった主要株式市場では軒並み年初来の上昇率が20─30%に達しており、フランクフルトとニューヨークは最高値圏にある。
これらの都市の人気地域の不動産価格は連動して動いている。
それでも労働市場や経済全体でなお需給ギャップは大きく、インフレの兆しはゼロか極めて乏しい点から、政策担当者に動揺の色はない。
<過去最大の過剰流動性>
JPモルガンのアナリストチームは、最近の資産価格上昇の背後にある投資家の資金の動き方は、流動性にものを言わせて株式も債券も、のべつまくなしに物色されていた年初の状況に似ているとの見方をしている。
その後、FRBの緩和縮小観測が浮上して多くのファンドは債券から逃げ出して株式に向かったが、現在は「(債券から株式への)グレートローテーション」というよりも「資産リフレ」の側面が強いという。
確かにトムソン・ロイター傘下のリッパーの米ミューチュアル・ファンドに関するデータでは、先週だけでも株式と債券、マネーマーケットいずれのファンドにも資金が流入した。
流入額は米国株が110億ドル超、外国株が約50億ドル、課税債券が30億ドル超だった。
世界的にみた流動性の規模はどの程度なのだろうか。
JPモルガンによると流動性は、中銀からの銀行システムに対する資金供給規模と、家計や企業、投資家に出回る通貨供給量で決まる。
中銀の資金供給で銀行に超過準備が生まれると、銀行が他の銀行から国債を買う動きが活発化して資産価格が上がる。
しかし今年5月がそうだったように、金利のボラティリティが高まって国債価格が不安定化すると、不透明感が解消するまでこうした超過準備は国債市場から逃げ出して現金に戻る。
これはある面では金融政策絡みの話が及ぼす影響力だけが、流動性をコントロールしていることを示している。
ただ、別の指標をみると世界の流動性は大幅に拡大しやすい状態のように見える。
JPモルガンの推計する世界の通貨供給量M2は年初来で3兆ドル増加(4.6%増加)し、インフレ率の2%よりずっと高い伸びとなっており、「過剰流動性」はなお記録的な高水準に突き進んでいる。
M2の増加はその3分の2が、年央の金融市場で生じた混乱でも国内融資の増勢が衰える気配がない新興国に由来する。
同社はこの「過剰流動性」の指標を資産価格の動向を探る指針として使い、価格上昇余地は引き続き大きいと結論付けた。
「昨年5月に出現した現在の過剰流動性は、規模の点ではこれまでで最も際立っている」という。