税金投入で成長産業は生まれるか?
否。
タダ銭がばらまかれるところでは、自ら稼ぐ意欲は削がれるので競争力は強くならない。 成長産業は生まれない。
税金を貸し付ければ、成長産業になるか?
否。
政府融資は恣意的になったり審査が甘くなるので、借り手側の不正の横行、無責任のまん延が起こりがち。 成長産業は生まれない。
政府融資が恣意的になったり、審査が甘くなるのは、リスクを負わない貸付だから。
役人が貸し付けるのは自己資金でなく税金なので、そこにはリスクなど皆無である。
政府の資金投入で成長産業が生まれるのは、海外からの技術導入(某国では盗んだ技術w)と安い労働力を組み合わせた場合のみ。
しかし、先進国には安い労働力はない。 自ら高い技術(もしくはノウハウ、ビジネスモデル)を開発せねば成長産業は生まれない。
(正確には「高い技術」でなく、「顧客の需要をヒットする技術」。稼ぎの元は顧客のお金だか
ら、技術者、研究者が好むオタク的な「高度な」技術が稼ぎを生むとは限らない)。
技術開発にはリスクが伴う。
リスクを取るには緊張感がいる。
タダ銭や甘い融資からでは、この「緊張感」が生まれにくい。
だから、税金投入、官主導の技術開発は非効率になったり、稼ぎにつながらない方向音痴なものになりがちである。
(例えば、日本の大学や公的研究機関で行われる技術開発はそうなりがち。 投入資金とアウト
プットを比較すれば、それは一目瞭然。 高度(オタク的?)かも知れないが、100年後も
役に立たない研究が多い、かも。 リスク資金を使ってないから、リスク資金に尻を叩かれない
から、リスク資金に選別されないからそうなるのです)
リスキーな技術開発はリスク資金でしか成就しない。
成長産業は政府主導、官主導では生まれない、、、先進国においては特に。
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先進国で成長産業を生むために必要なのは税金投入ではない。 規制緩和である。
リスク資金の流れや技術開発(もしくは新しいノウハウ、ビジネスモデルの創生)を阻害しない規制緩和こそ重要。
また、リスクテイクしやすくなる程度の景気浮揚や、適切な方向にリスクテイクが進むようなバブル抑制も重要である。
これは、すなわち、景気水準の適正化(デフレでもバブルでもない)であり、それは適切な金融政策によりもたらされる。
適切な金融政策とは、インフレ目標政策と動的資本規制の組み合わせである(前者は一般物価、後者は資産価格の適正化によりデフレやバブルを防ぐ)。
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まとめ. 適正な金融政策がベースにあり、そのうえで規制緩和、民間主導がなければ先進国のイノベーションは前進しない。 リスクフリーの政府経由の融資、税金投入は、民間リスク資金を細らせるので、効率的イノベーションには却ってマイナスになる。
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安倍政権の成長戦略は、上記の成長産業育成の法則と真逆である。 規制保護を温存したまま税金投入をしまくっている。
安倍政権が成長産業にしようとしている農業、医療は規制・保護が非常に強い産業なのだが、そこにほとんど手をつけず、タダの税金投入をガンガン行っているのである。
規制保護を温存し、税金集中投入するのは、安倍政権の「成長戦略」は建前だけで、実体は利権拡張政策、票田強化政策(農業、医療とも自民の支持基盤)だからにほかならない。
一方、アベノミクスの第二の柱たる景気対策、財政出動はどうか? 復興に財政出動を行うのは当然ながら、それ以外にも財政出動を増やす必要はあるか?
否である。
なぜなら、先進国においては公共事業の景気浮揚効果は低い。 発展途上国と異なり、インフラ整備が進んだ先進国では公共事業は持続的景気浮揚につながらない。 むしろ、経済効果の低い公共事業分野にヒトと金を集中させることで、事後の成長阻害要因になってしまう。 しかも、安倍政権が集中投資する国土強靭化は何百年オーダー超の希少災害対策を数十年程度で行うもので、効果発現まであまりに時間がかかりすぎる(本来、長期間かけて行うべきもの。でなれば資金、人材配分の偏在になり成長阻害要因になる)。
つまり、安倍政権は、成長戦略でも財政政策でも、発展途上国型の戦後復興モデルをより非効率な形で膨張させる逆噴射を行っている。 明治時代には官主導の発展途上国モデルから民間移管の先進国モデルへの移行が成されたが、戦後自民政権はその真逆を行っているわけです。 「成長戦略」、「財政出動」とも、その根っこが利権誘導にあるから、建前と裏腹の逆噴射政策に化ける。
(過去の流れ: 明治維新後、殖産興業政策の官主導 →民間移管後のレッセフェール
状態 →高度成長(数%成長は当時の世界では高成長)→融和主義外交の破たんか
ら戦時統制経済へ →終戦後のレッセフェール状態と高度成長(戦後復興のインフレ
整備の並存。高度成長期までは海外からの借金に依存したので効率的)→オイルショ
ック以降、官主導モデルに移行し急激に低成長化(低収益化したインフレ部門へ資金
集中))。
アベノミクスの三本の矢のうち、財政出動(景気対策、公共事業)、成長戦略の実態は、かように成長阻害的である。 残りの金融緩和(インフレ目標政策)も不十分化し景気抑制的になる可能性大。 これは、以前の日記で書きまくったとおり。 アベノミクスは、金融引き締めのうえ増税指向だった民主党政権よりは遥かにマトモだが、日本低落路線なことに変わりない
(民主党政権のデフレ政策から、自民政権で不十分ながらもインフレ目標政策に転換し、後先を考えない利権膨張政策が取られる今般景気回復局面は、日本株への最後かつバブル後、最高の投資機会である、、、もし、合理的な政策転換が今後も無ければそういうことになる。 ゆえに海外の方々は内心、アホノミクスと思いつつもアベノミクスを持ち上げる。 日本が没落するうえに大儲け出来るのだから美味しいのです)