銀行に滞留する緩和マネー~半沢直樹はいないのか

バラの会さん
バラの会さん
『銀行に滞留する緩和マネー~半沢直樹はいないのか』
2013年9月23日 19:37

013年6月末時点の資金循環表

 世界中が注目するFOMCの陰に隠れて、我が日銀がものすごく重要なデータを9月19日に発表しました。資金循環表がそれですが、新聞では以下のように報道され、めでたい話と受け止められていました。

 

“6月末の家計の金融資産残高は1590兆円、前年比5.0%増”

 

 冗談じゃない、今回の発表で一番大事なのは4月に始まった異次元の金融緩和の効果が、どのくらい銀行のポートフォリオを動かしていたかという点です。具体的に彼らのポートフォリオを見てみましょう。まずは異次元の金融緩和が始まる前の姿から。

 

 数字は兆円単位であり、全体ではおおよそ1700兆円もあります。ここから6月まで3か月間、大体30兆円くらい日銀は国債の買いオペを行い、預金取り扱い機関のポートフォリオから国債を吸収し、その代わりに当座預金に30兆円ほど振り込んできました。そのお金が何に変わったのかをチェックするのが今回の資金循環表を見る上で一番大事なところです。

 

銀行の怠慢 

 驚いたことに銀行は30兆円を動かしていません。まるでリスクを取っていないのです。数字が大きすぎるのでよくわからないかもしれないので、6月末と3月末の差額を棒グラフにしてみましょう。

 3か月間の間に日銀の買いオペによって銀行から30兆円ほど債券の残高が減ったのですが、それはそっくりそのまま現預金に積み上げられています。株式と派生商品(スワップやオプションです)が増えているように見えますが、これは保有する資産の時価が上がっただけの話でしょう。つまり彼らはこの3か月間何もしていない。怠慢を決め込んでいる。異次元の金融緩和という国家的な大事業に対して無視を決め込んでいる。日本の銀行は全くの無為無策にこの3か月過ごしている。こんなことが許されていいのか。

 

半沢直樹はいないのか

 高視聴率を誇ったTV番組「半沢直樹」は、思わぬしっぺ返しを主人公が食らう形で昨日予定された放送を終了しましたが(何やら続編があるような終わり方でもありましたが)、現実を知る人間としては、中身については苦笑するところが多かったのも事実です。例えば、金融庁はあんな馬鹿者の集まりではない、とか、銀行マンにそんなに多くの出向先はない、とか、ハンコ稟議書万能の邦銀の世界で、下のものが上の決定を覆すことなどありえないとか、要は“ああいう世界は本当にあるが半沢直樹のような人間は現実には存在しない”というのが、一番笑える悲しい現実です。それともうひとつ、あの時代、世論は金融庁の味方であり、“バブルを作りバブルを壊した国民の敵である銀行業界を一斉粛清してくれ!”というのが多くの人々の願いであったはずなのです。

 

 それが、時代が変わり、今度は視聴者が少なからず銀行員に同情的となり、正義の味方、半沢直樹を手に汗握って応援しているのですから世の中も変わったものだと言わざるを得ません。しかしそうした時代になったにもかかわらず、統計データは冷酷な現実を突き付けています。

 

 銀行は仕事をしていません。本来の責務である、広く社会に流動性を供給するという仕事を怠り、何もしないで現状維持を決め込んでいます。まだまだ数が多すぎるのならもう一度粛清して減らせばよい。借り手のせいにするのはもういい加減にやめなさい。

 

 マスコミは半沢直樹の話で銀行員に同情的ですからこうなると株主が動くしかないのですが、その株主も日本の場合、金融機関同士持ち合っているため、誰も銀行の経営を変えることが出来ない。結構、暗くなるニュースでした。

 

 また次のデータを待つしかないのですが、私は銀行に対して強い意見を発し続けるつもりです。

 

 ところで8月24日出版された、鈴木さんとの共著「超円安時代に稼ぐ投資術」をベースにしたセミナーが以下の日程で開催されることとなりました。

 

http://www.sigmabase.co.jp/school/seminar/investor/20130929.htm

 

 そこで、このレポートを呼んで下さる皆様にちょっとしたお願いなのですが、出来れば10月6日に参加してもらえるとありがたいのです。個人的に20日は忙しくて(けして開催が無理というわけではないのですが、それこそ嵐のようにセミナー会場に駆けつける、ということになりそうなので……)、現在、応募して下さっている方にも無理を聞いてもらい、20日の分を全て6日に移行してもらおうかと思っている次第です(講師の勝手な都合でスミマセン。でも無理なら万難を排して駆けつけます)。

 

 もしも6日に皆様、参加していただけたなら、直前の雇用統計を徹底的に分析して、私のその時点での持ちネタをすべてご披露するつもりです。

<了> 

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