「そうやな、私が買うやろ、ほしたら大衆の皆さんが一緒に買うてしまう。危ないからやめてくれて皆さんにお頼みするんやけど、いや○○さんと心中するんやったら本望や、いうてくれはりましてな。そやから、私も大衆のみなさんに損させんような相場を張っとった」 (沢木耕太郎著『鼠たちの祭』より)
これは、ある相場師の言葉である。
私が沢木氏のこの書を初めて読んだのは、もう20数年前だったろうか・・。
確か「人の砂漠」と言う短編集に入っていたような気がする。
「鼠たちの祭り」はその中の一編だ。
一人の相場師にスポットを当てた非常に興味深い内容(実話)である。
冒頭の言葉とは裏腹に、彼の信条は
「まず身内から欺け」というものであった。
自分がいかにも大量の買いを入れたと思わせておいて、他店で売りを建てる。
俗に言う、オトリ玉で市場を幻惑させた。
その当時、私もある人物からその話を伝え聞いてはいたが
勿論、実際に会った事はない。
生まれるのが後数十年早ければ、会っていた可能性はある。
だから尚更その「鼠たちの祭り」に、興味をそそられたのである。
あえて名前は書かないが、この本には実名で載っている。
名前を知ってる方も多いだろう。
以下が彼の信条である。
信条
・身内から欺け(いかにも買い出動したかのような玉を建て、それをオトリ玉とし、別の店で売る)。
・期近限月買い・期先限月売り、大阪買い、東京売りなど両面作戦で智略を巡らす。
・天才的な相場感覚と綿密な計算と深い読み。
・相場取引を収益性の高いビジネスに仕上げる。
彼は証券から始まり、そこから派生したある商取会社を設立し
相当な功績を残した。しかし
彼の名は、そのどちらの社史にも載ってはいない。
それは、私自身確認済みの事なのだから・・・。