最近の低位の建設株と鉄鋼,素材といった従来不況産業の代表的な業種の高騰は、株をファンダメンタルだけで見ている人にとっては、別世界の動きのように見えるかもしれません。
長期に続いたデフレ経済の中、海外市場での競争に敗れ、国内では少子高齢化のなかでの需要減退から、コストを削減するしか収益の改善方法が見つからない、いわゆる万年不況業種の値上がりです。
問題は、これらの業種の値上がりが一時的なものであって、優良株の復活とともにブームが去った時に、典型的なボロ株掴みになってしまうかどうかです。
昨年暮れから今年5月までのアベノミクス相場第1幕では、震災復興と財政出動効果を期待して、土木建設業種もテーマ株とみなされていましたが、実際に動いたのは市場規模の小さい新興市場や、ゲーム関連銘柄で、2倍3倍となる銘柄が続出しました。
これらの銘柄は、もともと収益性よりも業績の変化率が高い銘柄群で、そのためファンダメンタルそのものより、値動きの軽さで個人に人気が高い業種でした。多くの銘柄は、PERでは計れないほどの値をあげていまいました。
第1幕でテーマ株と見られていた復興興関連、社会インフラ関連は、相場全体の動きに合わせて上昇はしたものの、2倍3倍銘柄続出とまではいっていません。
アベノミクス相場第2幕では、明確に土木建設業種がテーマ業種になっています。最近の自然災害の大きさと頻度は、毎年どこかで大きな災害が起こっています。震災復興と原発汚染対策、オリンピック、リニア新幹線と、立て続けに大型土木建設工事です。大震災の復興という社会的なニーズと、ここ2~3年にわたり「コンクリから人に」といった流れで、極端に株価が抑えられ、企業の合理化が進んでいます。
土木、建設、機械、セメント、橋梁、住宅と関連業界も多岐に及んでいます。
もうひとつの柱と見られていた社会インフラ関連はどうでしょうか。原発再開が遅れる中、日本の輸出産業の中で、最も国際競争力があります。日本が地理上のメリットを生かし、これからの輸出を牽引する分野です。電力、配電、原子力、機械、鉄道車両、水開発、新エネルギーなどです。
安倍内閣が続く限り、テーマの柱は変わりません。
現在の相場の方向は、前回の大相場が始まった2003年によく似ていますが、スタートの時点では鉄鋼、非鉄、機械、資源といった株は100円前後でした。それが景気の回復と資源高で5倍、10倍にまで上がったのです。あのときも収益力が低く、ファンダメンタル無視で上がる株を見て「石が流れて木の葉が沈む」といって嘆いていた人が多かったと思います。
このように、相場の初期で動くテーマ株は、これからの相場の流れをリードし、息の長いものになります。この中から、将来、株価が5倍、10倍となる銘柄が続出するかもしれません。
ただ、将来とも持ち続けて問題ないのでしょうか。ボロ株がボロ株で終わるかどうかの判断基準は、業界の収益構造が掛かっています。業界全体の収益が増えている限り、ボロ株であっても持ち続けて問題はありません。
業界収益の伸びが止まったときに、再びボロ株に逆戻りをする銘柄と、収益を企業買収や新たな収益源に結び付け成長を続ける銘柄とに分かれます。ボロ株業種から抜け出して、高収益企業に変身した会社は数多くあります。いずれにしろ、企業は当初は、ボロ株からスタートするのです。
高収益で高配当企業はそれなりの株価になっています。これらの会社のなかから、2倍3倍となる銘柄が続出するとは思われません。低位ボロ株のほうが株価成長性は高いものです。いいボロ株を選別し、長期間保有し、その会社が高収益高配当企業に変身する姿を見ることこそ、株式投資の醍醐味です。
株の面白さは値上がりです。夢を買うのは株式投資の醍醐味です。とはいっても、ボロ株はあくまでもボロ株です。ボロ株を買っても、ババを掴まないように……。
「それが分かれば苦労はない」って。ごもっともです。
まず、テーマ業種の中から、現在の収益力は低くとも、将来の収益に夢が持てる中小型株を見つけ、しばらく持ってみることです。土木建設株でしたら、後2~3年は大丈夫です。周辺産業で、ファンダメンタルのよい企業が狙い目かもしれません。持っている間に、ボロ株かどうかの判断は付いてくるものです。それから先は、運命の神様に託しましょう。
皆様方の幸運を祈っています。